ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はシトロエン C4スペースツアラー(2014年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2020年12月10日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影:西尾タクト
■次期愛車選びの真剣試乗!
ベストカーには最新モデルの記事はたくさん出ているが、登場から数年経ったクルマの出番はほとんどない。
生産中止車を「残念だ」とか「よく頑張った」と言って惜しむことはたまにあるが、そんなに惜しいと思うなら、普段からもっと誌面に出してやりなさいよ、という話である。
そこで私は今回、2014年の登場で、すでに6年が経過しているクルマの試乗をお願いした。シトロエンC4スペースツアラーである。
C4スペースツアラーとして登場したのは2019年だからまだ1年しか経っていないが、実はこのクルマ、その前まで「C4ピカソ」という車名で売られていた。
マイナーチェンジで車名が変わるというのも珍しいパターンだが、なんでもフランスのピカソ財団と名前を使う契約を延長しなかったかららしい。世の中にはいろんなことがあるものだ。
とまぁ、いろいろ述べてきたが、本当のことを白状すると、今回の試乗車選びには私の個人的な事情が深く絡んでいる。次期愛車として関心があり、「実車で確認してみたい」という考えがあったのだ。
テリー、連載を私物化するんじゃない! と叱られそうだが、それだけでもない。3列シート車というと角張ったミニバンしかないと思い込んでいる世間の固定観念に一石を投じる狙いもあるのだ(言い訳ではない。信じてくれ)。
というわけで、C4スペースツアラーだが、ひと言でいって「ファンタジーなクルマ」だ。
ヨーロッパのデザイナーはプライドが高いから、こういう実用車でも人や荷物がたくさん乗せられればそれでいいというデザインは許さない。ヨーロッパの街並みや風景に合うかどうかをちゃんと考えているのだ。
日本車、特にミニバンはどうか。ハッキリ言って身の回り半径5m以内のことしか関心がない。室内の広さや収納スペースなどの利便性ばかりで、京都や金沢、あるいは都心の風景に合うデザインなどいっさい意識していないように見える。
だからC4スペースツアラーはかっこいい。
2〜3列目のシートがそれぞれ個別に収納できるなど利便性もしっかり追求しながら、それだけで終わっていないのが嬉しい。
日本のクルマとヨーロッパ車は決定的に違うと実感する。
運転してみても個性を感じる。
エンジンは4気筒の2Lディーゼルターボで、トルクが太く、余裕たっぷり。ボディサイズも大きすぎることはなく、意外と小回りが利くこともわかった。
また、インパネデザインも独特で、そこにも美意識を感じる。
最近の日本車はナビの画面の大きさが重要視されているが、このクルマはそれよりデザインを優先している。また、日本のミニバンはユーザーもメーカーもラクに運転できることを重視しており、その大切さもわかるが、それだけではつまらない。
そもそも、この年になって安楽椅子みたいなクルマに乗っていると、死が近づいてくるような気がしてしまう(笑)。
■数年後に人気が上がるクルマと見た!
2014年に登場し、もう6年が経過しているC4スペースツアラーだが、最近まで30年前のシトロエン2CVを所有していた私にとっては新車もいいところだ。
斬新なデザインはまったく古びていないし、逆に年月を経て、いい味わいが出てきているようにも思える。
今回乗った「SHINEブルーHDi」というグレードの車両価格は420万円。購入を考えてはいるが、正直に言って、この価格で新車を買う可能性は極めて低い。
中古車サイトを見ると、200万円台、300万円台の低走行車がゴロゴロしているのだ。どうしたってそちらに目がいってしまう。
中古車ジャンキーの私には、このクルマが何年後かに人気が上がっている様が目に浮かぶ。
さすがに新車価格より高くなることはないだろうが、中古車で買ったら、何年後かに同じくらいの価格で売れるのではないかと睨んでいる。中古車売買は真剣勝負だから、そういう読みも重要なのだ。
さて、結論を出そう。シトロエンC4スペースツアラーはとてもいいクルマだった。フランス車の個性や美学をガンガン感じるし、実用性や利便性も充分に高い。
ただし、新車価格は高すぎる。せめて300万円台、それも前半に収まっていてほしい。
こういうクルマは、ちょっとヤレた感じの安い中古車を見つけて買うのがかっこいいのではないか。どういうわけだか、そんな結論になった。クルマは奥深いものである。
●テリー伊藤 今回のつぶやき
日本のミニバンにはない独特の味わい。使い勝手だけでなく、走りも楽しいのが大いなる魅力だが、新車はちょっと高いね。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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