北海道有珠郡壮瞥町の一般社団法人そうべつアウトドアネットワークは、ELEMOs合同会社と連携のうえ、免許不要で公道走行が可能な次世代四輪EV【ELEMOs4 MAX】(エレモーズ4 マックス)を活用した実証実験を、自治体としては日本初となる取り組みとして開始する。

文:古川智規(バスマガジン編集部)
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■免許返納後の移動手段不足

特定小型原付扱いの四輪EV車

 壮瞥町では、公共交通機関の縮小などにより免許返納後の高齢者の移動手段の確保が課題となっている。また、観光客においても公共交通機関のみでの観光周遊には限界があり、自由な移動を叶える手段が求められていた。

 そこで、2023年7月の道路交通法改正により定義された「特定小型原動機付自転車」に分類される四輪EV【ELEMOs4 MAX】(エレモーズ4 マックス)に着目した。3台を導入し実証実験を行うことにしたという。

 今回の実証実験を通して、高齢者の移動手段の確保や観光客の利便性向上、そして環境負荷の軽減といった効果を検証し、誰もが快適に暮らせるまちづくりを目指すとしている。

■ELEMOs4 MAXとは?

四輪なのは最大の安心点(メーカーサイトより)

 ELEMOs4 MAXとは、16歳以上なら免許不要で公道走行が可能な特定小型原動機付自転車に分類される四輪EVである。四輪のため、自転車やキックボードのように転倒する心配がなく誰でも運転しやすいのが特徴だとしている。

 基本的な運転方法はスマートキーをかざして電源を入れ、アクセルをひねるだけの簡単操作で既存の特定小型原付に分類される電動キックボードと似ている。

 4輪の安定性とサスペンションにより、スムーズで快適な乗り心地は高齢者には選択肢となりうる。車道モードと歩道モードの2つの走行モードを搭載し、車道モードでは最高速度20km/hまで加速が可能だ。6時間の充電で40~50kmの走行が可能なロングラン仕様のようだ。

■バスの代替になりうるのか?

耐久性と低速度を考慮して車軸懸架を選択(メーカサイトより)

 メーカーの希望小売価格は税込み328000円だが、全国的にバス路線が廃止の危機にさらされている現状では自衛するしかない地域も多いだろう。特に鉄道や地下鉄、路線バスの便が期待できない地方で免許を返上してしまった高齢者の移動問題は深刻だ。

 高齢者の移動として代表的なものは通院と普段の買い物だが、都市部の病院のように無料巡回バスを走らせてくれる病院が多いとは言えず、ネットで買い物をして自宅まで当日中に配達してくれるサービスを行っている店舗がなければ自分で行くしかない。

■距離や天候の問題も

着座できるのは高齢者には必須の条件

 そのためにこのような移動手段を選択肢として示すのは一つの解決方法としては実証する価値はあるだろう。北海道のような広大な地で通院や買い物にどれだけの距離を移動するのかは定かではないが、いずれにしても地方だとかなりの距離を走ることになろう。

 時速20キロメートルの特定小型原付で連続して乗れるのは、せいぜい数キロメートルだろう。着座できることを考えても片道10キロメートルでも現実的ではない。降雨、降雪時にはなおさらだ。航続距離は問題ないとしても、それいっぱいに走ることはできないだろう。

■結局は路線バスに帰結してしまう

観光の足ならば最適だが日常の足になるかどうかに注目の実証

 ある条件下では免許返納者の救世主にはなっても、一時的な観光客の足としては有用な選択としても、恒久的に選択されうるかといえば難しい感もある。

 一時的にこういった施策で実証を積むことは大切なことで、やむを得ない選択なのかもしれない。しかし、最終的には人が住んでいる限りは移動手段は必要なので、駅や病院、商業施設までのフィーダー路線としてバスはなくてはならない交通インフラであることは言うまでもない。

 鉄道よりも復活は容易だとしても、交通機関というのは廃止されてしまえば旅客数の減少という理由がほとんどなので、二度と戻らない傾向にある。現在は運転士不足が廃止や減便理由の第一にあがっているが、それも赤字が著しい路線から廃止されるのは当然の判断だ。

 免許が不要なのは不要な理由があるからであり、本格的な移動手段として定義されるのかどうかは、現状に追い付いていない交通政策や立法措置の迅速な検討が必要だろう。

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