日産の決算発表がとてもじゃないが厳しい数字になってしまった。9000人のリストラ、そして営業利益予想はまさかの1500億円下方修正。また日産に危機が来てしまった。一体なぜこんなことになってしまったのよ。

文:ベストカーWeb編集部/写真:日産

■アメリカでのハイブリッド需要の増加

新型キックスとムラーノには需要の高いe-POWERが設定されていない

 日産は2024年度の上期決算発表を行った。前回見通しと比較して売上高は14兆円から12兆7000億円に、営業利益は5000億円から1500億円に下方修正した。

 前回の為替レート想定は1ドル155円だったが、今回で149円に修正。複雑な事情が絡んでいるにせよそもそもの想定がかなり甘かったように思える。

 対策として日産は9000人のリストラ、グローバル生産能力20%削減など痛みを伴う施策を実施する。いったいなぜこうなってしまったのだろうか……。

 大きな争点はアメリカでの電動化の遅れにある。日産は元来からBEV戦略を進めてきたが、アメリカなどグローバル市場でも乗用車としてはリーフ、アリアという2枚看板のみ。

 日本市場こそ軽自動車のBEVサクラがスマッシュヒットを記録したが、アメリカではe-POWERなど電動化モデルの投入はかなり遅れており、先日発表になった新型ムラーノ、そしてキックスにもガソリンエンジンしか投入していない。

 これは完全に経営陣の失策でしかなく、EVをリードしてきたメーカーとして熟成してきた技術もまったくもって生かされていない。

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■まったくやる気がないとも思えた日本市場

現在日本市場の屋台骨となっているノートとセレナの2台のみに

 すっかり影が薄くなってしまったが日本市場はセレナ、ノートの2本柱。かつて存在した非e-POWERのハイブリッドモデルもスカイラインを最後に途絶えたし、フーガなどのFRモデルで終焉を迎えてしまった。

 日本で大切なミニバン市場では、代替わりするたびに売れ行きを伸ばすアルファード/ヴェルファイアに対し、2010年から同一型式のエルグランド。いまだに3.5LのV6エンジンが上級車種で、走りはいいけれど流石に一般層にはハイブリッドがないだけで微妙な存在に。

 セダンもシルフィ、フーガ、シーマ、ティアナ、ラティオ、プレジデントなどを廃止。現在はスカイラインのみ。流行りのSUVもキックスとエクストレイル、そしてBEVのアリアのみ。

 この状況でいったい国内市場はどうすればいいのか、というのは販売会社への取材から聞こえてくる声だ。せっかく育ててきたブランドをあっという間に潰してしまったその決断は、果たして正しかったのだろうか?

「最近の日産は愛がない」とクルマ好きは口をそろえる。ちょっと古い話だがCMで180SXとリーフを競争させたり、ちょっとしたところに自社ブランドへの愛を感じないのはたしかだ。

■一番の被害者は日産のエンジニアたちだ

技術の日産の呼ばれているように、開発に携わるエンジニアは優秀。彼らが報われる日は訪れるのだろうか

 振り返れば日産はこのような非常に危なっかしい橋を過去にも渡ってきた。1990年代にひとりよがりの官僚的な経営方針で鳴かず飛ばずの車種が増えた。そして挙げ句の果てにルノーに救われるという屈辱を味わっている。

 しかしそこからカルロス・ゴーンの手腕もありV字回復を果たすが、またしてもここまでの危機が訪れてしまった。ここまでくると一番の被害者は日産のエンジニアたちだろう。

 もちろん販売会社なども大きな痛手を被っているのだが、それでもエンジニアたちの苦悩は大変なものだと思う。

 日産のエンジニアは非常に優秀だ。最近でいえばVCエンジンもそうだが、e-POWERや4WDの制御などそのエンジニアリングは他社の追従を許さない。もちろんフルハイブリッドだって問題なく実用化してきた。

 ありきたりな材料を生かして素晴らしいレシピを作っても、それを高級な料理に仕立てる機会がなくなっている。日産はそんな状況に陥ってしまった。

 懸念されている北米市場へのe-POWERなど電動モデル投入は2026年と報じられている。現状を見れば遅すぎるのだが、いかに行き当たりばったりな経営をしてきたかは一目瞭然だ。開発現場は準備ができているのに、GOサインが出るのが遅すぎた。

 「電気自動車のパイオニア」を標榜する日産が、電動化の潮流に乗れなかったのは大きな皮肉になってしまった今回の決算発表。技術の日産、みんなが憧れた日産は復活するのだろうか? 

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