近年、世界的に高い人気を誇るスタイルのひとつが、レトロな雰囲気と最新の装備を備える「ネオクラシック」というジャンルです。特に、2024年は、10月にホンダが「GB350C」、11月にはカワサキが「メグロS1」「W230」を発売。いずれも、昭和レトロなテイストを持つことで、このジャンルの注目度がさらにアップしています。
ここでは、そんな昭和レトロ系モデルのなかでも、最新&注目モデル5機種をピックアップして紹介しましょう。

  文/平塚直樹  

カワサキ・メグロS1

 かつて存在した2輪車メーカー「目黒製作所」の名称を受け継ぐのが、カワサキの「メグロ」ブランド。その最新モデルとして2023年10月の「ジャパンモビリティショー2023」で発表、2024年11月20日に発売されたのが、232cc・空冷単気筒エンジンを搭載する「メグロS1」です。

 

 

 1924年に創業した目黒製作所は、第2次世界大戦前から戦後直後にかけて、数多くの高性能モデルをリリースし、一斉を風靡した企業。とくに500ccや650ccなどの大排気量モデルに定評があったのですが、1950年代後半以降、小排気量モデルの人気上昇に対応できず、業績が悪化。1964年にはカワサキ(当時の川崎航空機工業)に吸収合併されたのです。

 そして、今回発表されたメグロS1は、合併後の1964年に発売された「250メグロSG」をオマージュしたバイク。カワサキも、このモデルを「正統な後継車」と発表していますから、まさに昭和のモデルを復刻させた最新のオートバイがメグロS1だといえます。

 

 

 ちなみに、カワサキは、従来、773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「メグロK3」を販売しているのはご存じの通り。そのため、メグロS1は、その弟分で、メグロ・シリーズに属する軽二輪タイプということになります。

 

 

 主な特徴は、元祖である250メグロSGを彷彿させるティアドロップ型の燃料タンクを採用していること。ブラック×クロームメッキのカラーや、両サイドに装備した「MEGURO」の車名ロゴも、オリジナルにかなり近い雰囲気を演出します。

 また、空冷フィン付きの単気筒エンジンから後方へ水平に伸びるマフラーには、サイレンサー(消音器)部分が太く、先が細くなったキャプトンタイプを採用。加えて、スポークタイプの前後ホイール、アップライトなバーハンドル、カタカナの「メグロ」ロゴが入ったサイドカバーなどにより、全体的にレトロな雰囲気を演出しています。

 前後ブレーキは、元祖がドラム式だったのに対し、新型はディスクタイプを装備することで、より安定した制動力を実現。シートは、もともとライダー側とタンデム側が分かれたセパレート式だったのを一体型に変更し、より乗員の自由度を向上させています。

 ボディカラーは「エボニー×クロームメッキ」の1色展開。価格(税込み)は72万500円です。

     

カワサキ・W230

 メグロS1の兄弟車で、同じくジャパンモビリティショー2023で発表され、2024年11月20日に発売されたのが「W230」です。

 

 

 こちらは、カワサキが1966年に発売した「650-W1」、通称「W1(ダブワン)」の車名を冠したモデルです。624cc・並列2気筒、バーチカルツインの愛称を持つエンジンを搭載したこのモデルは、当時のバイクとしてはかなり高性能だったことで、世界的に大ヒットを記録。「大排気量の高性能モデル」という、のちに続くカワサキ製オートバイのイメージを生み出した名車だといえます。

 

 

 ちなみに、このW1は、前述した目黒製作所との合併後、1965年に発売した「500メグロK2」がベースといわれています。つまり、メグロは、カワサキ「W伝説」誕生のきっかけとなったブランド名なのです。しかも、2024年は、目黒製作所の創立100周年という記念すべき年。こうした背景から生まれた新型が、メグロS1とW230です。

 なお、Wシリーズにも、従来、メグロK3と同じ773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「W800」をラインアップ。W230は、その弟分となる軽二輪タイプという位置付けとなります。

 

 

 W230の主な装備は、まず、エンジンにメグロS1と同じ232cc・空冷単気筒を搭載。ティアドロップ型の燃料タンクや前後スポークホイール、丸目1灯ヘッドライト、スチール製のフロントフェンダーなどにより、レトロな雰囲気を演出している点も同様です。また、前後ディスクブレーキなど、要所要所に最新の装備を持つことも類似点だといえるでしょう。

 ただし、全体的な雰囲気は、メグロS1とやや異なります。例えば、燃料タンクには、「W」のロゴを配することで、ブランドの違いをアピール。車体色には、ホワイトを基調にブラックの差し色を入れた「パールアイボリー×エボニー」と、ブルーをベースにホワイトのラインなどを施した「メタリックオーシャンブルー×エボニー」の2タイプを設定。いずれも、都会にもマッチするスタイリッシュな雰囲気も醸し出します。

 ちなみに、このW230は、女性ライダーにも人気が出そうなボディの色使いを採用していることから、個人的な見解ですが、かつての名車「エストレア」を彷彿させます。このモデルは、1992年から2017年まで販売されたロングセラーの軽二輪モデルで、エンジンには250cc・単気筒を搭載。シンプルでレトロなスタイル、扱いやすいエンジン特性や良好な足着き性などにより、女性はもちろん、幅広い層に根強い人気を誇ったバイクでした。

 W230は、そうしたエストレヤが持っていた雰囲気も継承。気軽に乗れるWシリーズの末弟として、こちらも多くのユーザーから支持を受けそうな気がしますね。

 なお、価格(税込み)は64万3500円です。

 

 

ホンダ・GB350C

 人気の空冷シングルスポーツ、ホンダ「GB350」の兄弟モデルで、クラシカルスタイルを採用したのが新型「GB350C」です。

 

 

 元々、ホンダの「GB」というモデルは、1983年に登場した「GB250クラブマン」が元祖。249cc・空冷単気筒エンジンを搭載したこのモデルは、1960年代に英国など世界のレースで活躍したシングルレーサー風のスポーティでクラシカルなフォルムが特徴。また、軽快で扱いやすいことが支持され、1997年まで販売されたロングセラーモデルでした。

 

 

 また、1985年には、400cc版の「GB400ツーリストトロフィー」や限定仕様の「GB400ツーリストトロフィーMkII」、500cc版の「GB500ツーリストトロフィー」なども販売。いずれも、シリーズ共通のクラシカルな外装とスポーティなフォルムが人気を博したモデル群でした。

 そんなGBのネーミングを復活させたのが、2021年に登場したGB350です。パワーユニットには、存在感のある直立シリンダーの348cc・OHC空冷シングルを採用し、力強いトルク感と味わいある走りを実現しています。

 スタイリングでは、燃料タンクやサイドカバーに、丸味を帯びた温かみのある形状を採用。さらに、金属ながら表情豊かな造形としたクランクケースカバーやシリンダーヘッドなどにより、高い質感やトラディショナルな外観も演出します。

 

 

 ラインアップには、スタンダード仕様のGB350と、スポーティ仕様のGB350Sを用意。GB350のホイールがフロント19インチ、リア18インチなのに対し、GB350Sはリアホイールを17インチに小径化し、ワイドなラジアルタイヤをマッチングすることで、より俊敏な走りを実現します。

 

 

 GB350Cは、そんなGB350をベースに、よりクラシックなテイストをアップし、2024年10月10日に発売された新型モデルです。主な特徴は、クラシカルながらスポーティな雰囲気のベース車と比べ、重厚感あるフロントフォークカバーの採用などで、よりレトロな雰囲気をアップさせていることです。

 車体は、ヘッドライトカバーなどのフロント部から、燃料タンク、サイドカバー、セパレートタイプのシートへと、リアにかけてなだらかに傾斜したプロポーションへ変更。加えて、前後のフェンダーの大型化や、水平基調のキャプトンタイプマフラーなどの採用により、さらにロー&ワイドを強調したスタイルを実現しています。

 

 

 ボディ色には、カジュアルで親しみやすさを感じさせる「プコブルー」と、重厚感と高級感を表現した「ガンメタルブラックメタリック」の2色を設定。

 価格(税込み)は、スタンダードのGB350が56万1000円、スポーティ仕様のGB350Sが60万5000円なのに対し、GB350Cは66万8800円となっています。

 

GB350C(ガンメタルブラックメタリック)

 

ヤマハ・XSR900GP

 1980年代のヤマハ製WGP(ロードレース世界選手権)マシン「YZR500」を彷彿とさせ、新機軸のカフェレーサーとして注目なのが「XSR900GP」です。

 

 

 ヤマハが「スポーツヘリテージ」と呼ぶ「XSR」シリーズの新型で、ジャパンモビリティショー2023で初披露、2024年5月20日に発売されたのがこのモデルです。

 従来、XSRシリーズのラインナップには、125ccの「XSR125」、700ccの「XSR700」、そして新型のベースとなった900ccの「XSR900」を用意。いずれも、往年の名車をオマージュしたスタイルと、最新の装備をマッチさせていることがポイントです。

 

 

 そんなXSRシリーズで初のカウリング装着モデルがXSR900GP。大きな特徴は、大型クリアスクリーンとナックルバイザーを装備したフロントマスクです。とくに別体式のナックルバイザーは、まさに1980年代のYZR500が持つスタイルを彷彿させるものです。

 また、メインカラーとなる「シルキーホワイト(ホワイト×レッド)」仕様には、イエローのゼッケンプレートも採用。これは、YZR500が参戦した世界最高峰2輪車レース「WGP(現在のMotoGP)」の頂点、「GP500ccクラス」に出場するマシンにだけ与えられたものをモチーフとしています。

 

 

 さらに、もともとのバーハンドルをセパレート式ハンドルに変更。ハンドルをマウントするトップブリッジ上面部分など、コックピットまわりのボルトも新デザインとし、質感の向上も図っています。

 エンジンには、XSR900と同じ888cc・直列3気筒を搭載。最高出力88kW(120PS)/10000rpm、最大トルク93N・m(9.5kgf・m)/7000rpmを発揮するパワーユニットは、コンパクトな燃焼室などにより燃焼効率を上げることで、高いトルク性能を実現します。

 また、独自の走行支援テクノロジー「YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)」も搭載。ワインディングやサーキットに適した「スポーツ」、市街地走行に適した「ストリート」、雨天時などで悪化した路面状況に適した「レイン」といった3つの走行モードに加え、各種設定を任意に設定できる2タイプの「カスタム」モードも用意。ライダーが好みや路面状況に応じて、エンジンの出力特性や各種電子デバイスの介入度を選択することを可能とします。

 ほかにも、メーターに視認性を配慮した5インチTFTディスプレイを採用。表示パターンは、専用のアナログ風タコメーターを含む4種から選択可能です。さらに専用アプリ「Y-connect(Yamaha Motorcycle Connect)」をインストールしたスマートフォンとバイクを接続する機能も装備。電話やメールの着信通知など、さまざまな情報や画像をメーターに表示できるなど、スマホと連携した多様な機能を使えます。

 ボディカラーは、前述のシルキーホワイトのほか、「パステルダークグレー」の2色を設定。価格(税込み)は143万円です。

 

 

カワサキ・Z900RS/SE/カフェ

 2017年の発売以来、大型バイクのなかでも特に大きな支持を受けている大ヒットモデルが、カワサキの「Z900RS」です。

 

 

 そのルーツは1972年に登場し、世界中でいまだに高い支持を受ける900ccモデルの名車「900スーパー4」、通称「Z1」。ティアドロップタイプの燃料タンクやテールカウル、水冷ながら美しいフィンを持つ948cc・並列4気筒エンジンなどの採用で、名車Z1のスタイルを現代に蘇らせているのがZ900RSだといえます。

 

 

 また、トラクション・コントロールやマルチファンクション液晶パネル、LEDヘッドライトなどの最新テクノロジーや高性能パーツも搭載。クラシカルなフォルムだけではなく、最新の装備により高次元での走りも実現。街乗りから長距離ツーリング、ワインディングやサーキットのスポーツ走行まで、幅広いシーンで楽しめるマシンに仕上がっています。

 ラインアップには、スタンダード仕様の「Z900RS」、オーリンズ製リヤショックなどを採用したハイグレードな「Z900RS SE」、フロントカウル付きの「Z900RSカフェ」を用意します。

 

 

 

 

 ちなみに、二輪業界紙の「二輪車新聞」が発表した2024年上半期(1月〜6月)の全国新車販売台数によると、3292台を記録し、小型二輪の400cc超クラスで1位を獲得。しかも、新車販売台数における上半期トップは「7年連続」! まさに、国産ビッグバイクの絶対王者といえる存在といえます。

 そんなZ900RSですが、2024年9月1日に発売された最新モデルでは、カラー&グラフィックを変更しています。

 Z900RSには「キャンディトーンレッド」、Z900RS SEには「メタリックフラットスパークブラック×メタリックマットカーボングレー」、Z900RSカフェには「エボニー×キャンディライムグリーン」をそれぞれ採用。また、3タイプ共に、燃料タンクの「KAWASAKI」のロゴを、ヘリテージな雰囲気の書体に変更しています。

 加えて、Z900RS SEの燃料タンクとサイドカバーには、細かな傷の自己修復作用をもつ「ハイリーデュラブルペイント」も採用。車体の美しさを長く保ち続ける効果に貢献しています。

 価格(税込み)は、Z900RSが148万5000円、Z900RS SEが170万5000円、Z900RSカフェが151万8000円です。

 

 

 クラシカルなスタイルと、最新の装備による余裕ある走りが魅力なネオクラシックバイク。なかでも、ここで紹介した5モデルは、昭和レトロ感が満点なことで、ツーリング先の郊外などはもちろん、都市部にもマッチするスタイリッシュさも魅力です。まさに、今後も注目株となるモデル群だといえるでしょう。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/423208/

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