路線バスで使われる車両には、車体のサイズごとにジャンルがあり、大まかには大型・中型・小型に分けられる。

文・写真:中山修一
(日本全国津々浦々で絶賛活躍中!! 日野ポンチョの写真つき記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■奥深き小型バスの世界

小型バス「日野ポンチョ」。写真は南城市Nバス(沖縄県)

 大型・中型・小型バスのうち、「小型バス」に含まれるものに注目してみると、国土交通省が示している区分では、車体の長さ7m程度、定員が最大38名くらいまでのサイズのバス車両が小型バスの枠組みに入る。

 それよりサイズが小さい車両も小型バスの一種になり、そこにはマイクロバスやワゴン車も含まれるが、種類が多くなりすぎてしまい、ちょっと煩雑。

 そこで、もっぱらバスを趣味で楽しむ際は纏まりをよくするために、国が定める基準に関係なく、もう少しサイズを細分化させることがある。

 小型バスには、マイクロバスよりも大きく、中型バスよりも小さいクラスの車両があり、それに該当する車両のみを「小型バス」と呼んで、ワゴン車やマイクロバスと差別化を図るわけだ。

■バリアフリー時代の小型バス

 マイクロ以上中型未満の小型バスは、どちらかといえば車体デザインや内装を中型・大型路線車に寄せてあり、よりバス車両然とした容姿の車種がほとんどだ。

 その中で、2000年代に入って以降最も急速に普及した車種といえば、日野自動車が手がけた「ポンチョ」だ。

大型路線車(左)と小型路線車の日野ポンチョ

 現在の日野ポンチョは2代目にあたり、初代は欧州メーカーのシャーシとエンジンを使用した半分外車と言えるもので、車体寸法がより小さくボンネットの付いた、デリバリーバンのようなスタイルをしていた。

 2006年に発売した2代目からは箱型ボディを載せ、ひと目で路線バスに使うクルマだな、と分かる姿に変わった。

 とはいえ、全体的に丸みを帯びたスタイルに丸目2灯のヘッドライトを組み合わせた、愛嬌のある顔つきは、それまでのバス車両にはない斬新なデザインであった。

 全長6.3mと7mの2種類があり、定員は前者が29名で後者は33〜36名。7m車のほうは1ドアもしくは2ドアから選べる。

 5,000ccクラス180馬力のディーゼルエンジンを搭載し、5速オートマ。幅は2.08mで、マイクロバスに比べて7cmほど広く、中型路線車より22cmほど狭い。

 幅の狭さに対して背丈は3.1mと結構高く、これは中型や大型路線車とあまり変わらない。ホイールベースに至っては7m車は約4.8mあり、実は中型路線車の4.4mよりも長い。

2ケタナンバーの旧車(左)と並ぶ、奈良交通の病院アクセス路線向けポンチョ(奈良県)

 バリアフリー時代に登場した車ということで、乗降のしやすさを考慮し、ノンステップかつ床面をフルフラットにした結果、凄く長いホイールベースという副産物的な特徴が生まれたと言えそうだ。

■気づけば小型バスの代表格に?

 街中で日野ポンチョを初めて目の当たりにした時、ずいぶん不思議な形をしたバスがあるもんだな、と思ったのを何となく覚えている。

市内循環バス ひたはしり号(大分県)。以降の写真のクルマは全部ポンチョ

 しかし当初は異端に見えたポンチョも、バス路線の利用率に応じた車両のダウンサイジング化が進むとともに普及していった。

 発売から18年経った2024年現在、今も現行車としてカタログに並ぶポンチョは、各地に浸透しまくった結果、むしろ小型バスの標準フォーマットに定着したほどの変化と勢いを感じる。

■仕事を選ばないポンチョさん

 気がつけば小型バスの代表格に上り詰めた日野ポンチョであるが、主な用途に挙げられるのが、短距離を走る地域のコミュニティバスだ。

文京区コミュニティバス「Bーぐる」(東京都)

 他にも、都会やローカルエリアに関係なく、街の周辺を巡ってマクロな輸送をカバーする循環バスにもポンチョの出番が多く、村営バスや町営バスでも良く見かける印象。

 とはいえ、ポンチョを導入しているバス事業者は村営・町営から大手まで非常に幅広い。さらに、短距離専用車というわけでもなく、1回で40km以上走る路線に使われている場所もあったりする。

天草本渡市街地循環バス「のってみゅうかー」(熊本県)

 定員の関係から、利用者の少ない路線に活躍の場は限られるものの、それほど仕事を選ばないのがポンチョの特徴の一つに思える。

■ポンチョどこにでもいる説

 最近は全国各地へ行くと、バスターミナルでバスウォッチしている最中や、街中を歩いている時でもポンチョを見かける機会がかなり多い。

高知東部交通の一般路線向けポンチョ(高知県)

 あまりにも出没頻度が高いため、もしかするとポンチョは今やどこにでもいるのでは? という気がしてくる。

 そんな説は嘘か誠か、何事にも削り出すなら一番大きい塊から。とりあえず都道府県別に見てポンチョがいる/いない場所はどこなのかを検証してみることにした。

当別ふれあいバス(北海道)

 各都道府県内の、どこかのバス事業者が1台でもポンチョを使っていれば「いる」にカウントするとして、47箇所それぞれ見てみると……

・ポンチョのいる都道府県:47
・ポンチョのいない都道府県:0

……北海道から沖縄県まで堂々の普及率100%!! 都道府県別のレベルであれば、ポンチョはどこにでもいる、が答えになった。

柏崎市街の循環バス「ひまわり」(新潟県)

■ささやかなポンチョ探し

 ポンチョにも乗ったり見たりと、普通のバス趣味と同じく色々な楽しみ方ができ、その一つに、ボディに施された塗装に注目する、という趣向がある。

病院へのアクセス路線に使われている、東急バス標準色のポンチョ(神奈川県)

 コミュニティバスや循環バスに使われる機会の多いポンチョは、その路線専用の塗装をボディに施したり、独自のラッピング仕様にするのが主流だ。

 とはいえ、大手が導入しているポンチョの中には、大型・中型路線車と同じ、そのバス事業者の標準色に塗られているものがある。

熊野御坊南海バスの標準塗装車(和歌山県)

 標準色に塗られたポンチョは相対的に数が少ないようで、ややレアキャラ寄り。これを探して記録に取ると、ささやかな宝探しのような要素が加わって、バスウォッチがより楽しくなるかも!?

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