バイク事故や先天性の障がいでバイクに乗ることが叶わなくなってしまった方々を対象としてバイクに乗る楽しさをもっと広めたい、と2020年から活動を続けている一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP) が、今回で3度目となる「やるぜ!!箱根ターンパイク」を開催した。

  文/青山義明  

免許はなくなってしまったけれど 仲間と一緒にツーリングに

 伝説の「青木三兄弟」の三男で2度のWGP世界チャンピオンを獲得した青木治親が理事を務めるSSPは2020年から機能障がいを有する方々を対象に「パラモトライダー体験走行会」を行っている。これは青木三兄弟の次男・拓磨を再びバイクに乗せるプロジェクト「Takuma Ride Again」をきっかけに、その対象を一般の障がい者にも拡大し、実際にバイクに乗る機会を設けようと開催しているもので、障がいを持つ方々それぞれの機能障がいに合わせてバイクをカスタムし、多くのボランティアスタッフがこれを支えることで、車いす生活を余儀なくされている方でも、全盲の方でも、実際にバイクに乗る機会を提供してきている。

 

 

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 具体的には車いす生活を余儀なくされている下半身不随のパラモトライダーには下肢を使うシフト操作を電磁アクチュエーターで手元にレイアウトしたスイッチで操作できるようにしたり、盲目のパラモトライダーはインカムをつけて進む方向を指示しながら走行をしてもらうというものになる。バイクへの移乗はもちろん、バイクが一番不安定になる発進や停止の低速時はボランティアスタッフがこれを支えることでパラモトライダーが走る環境ができあがる。

 その最終的な目標は一般公道をみんなで一緒に走るというもの。「パラモトライダー体験走行会」は、サーキットや自動車学校、駐車場などクローズドの環境での体験走行となっているが、一般道で仲間と一緒にバイクでツーリングをしたい、ということ。それを叶えることができる場として「アネスト岩田ターンパイク箱根(箱根ターンパイク)」で2022年、そして2023年に開催してきている。

 障がい者の中には、機能障がいをきっかけに2輪免許がなくなってしまう方々も多く、箱根ターンパイクであれば一般公道でありながら貸し切りもでき、クローズドコースと同様に免許のないパラモトライダーが走行できるのだ。

 

SSPがこのツーリングに持ち込むのは障がい者でも乗れるようカスタムされた大型バイク。一度走り出してしまうと途中で止まることはできないし、ボランティアスタッフがいる地点まで戻ってきてもらわなければならない。そのためトルクの大きな大型バイクで箱根の山道もしっかり走ってもらうのだ。

 

すでにパラモトライダーも旧知の中といった感じで朝からさまざまな情報交換をしたり…。 大観山から下ってきて小田原料金所でUターンをしてまた大観山まで登るルート。このUターン地点はスタッフが最も心配しているポイントだけにライダーも緊張をしながら走っていく。      

14名のライダーを支えるため総勢150名以上が集まった

 今回で3回目となる「やるぜ!!箱根ターンパイク」だが、当初予定していた9月1日(日)は台風10号の影響を鑑み、走行を行うこと、そして全国から集まる参加者とボランティアスタッフの安全に配慮し、直前に延期を決定。そして3回目にして初めて11月の開催となった。

 この11月30日の早朝から午後2時までの時間を貸し切りとし、この時間を使用して14名のパラモトライダーが走行することとなった。走行は箱根ターンパイクの箱根大観山口~小田原の箱根小田原本線約14km、標高差1000mのコースを往復する。

 参加できるパラモトライダーは、パラモトライダー体験走行会で一定レベル以上の技量で走行ができる者ということで、過去にパラモトライダー体験走行会に参加したメンバーを中心に14名が参加。前回の箱根開催後から体験走行会に参加し審査に合格して今回初箱根となったパラモトライダーも存在する。

 事故をする前に一緒に走っていた昔のバイク仲間など、それぞれが仲間のライダーを誘って走行を行った。パラモトライダーのヘルメットには「B+COM(インカム)」を装着して会話ができるようにし、先導と追走の車両がパラモトライダーの車両の前後に寄り添い緊急時に対応する。寺本幸司、今野由寛、斎藤栄治、佐藤太紀、平野ルナ、そして青木宣篤といったレーサーたちがその先導役をかって出ている。

 

先導車の後ろにパラモトライダー。そして追走車両がいて、さらに仲間たちがその後ろを走る。腕章をつけているのがパラモトライダーである。

 


箱根はちょうど紅葉シーズンの真っただ中。晩秋の低い陽の光も相まってとてもの美しい秋のツーリングとなった。

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 当日は、箱根周辺は晴れ。大観山にあるアネスト岩田スカイラウンジからは富士山が山頂からすそ野までしっかり見えるほどの好天に恵まれた。さすがに11月末日ということで早朝の冷え込みは厳しかったものの、日中はしっかりしたジャケットを着こめば十分ツーリングができるほどの温かさとなった。

 参加したパラモトライダーが皆この晩秋というか初冬ともいえる時期の箱根を走行するということに一様に不安を持っていたようだが、当日の好天、そして走行ルートからは小田原から湘南地域にかけて遠くまでくっきり見渡せる景色も楽しめたと非常に好評だった。コロナに罹患したため昨年の箱根に参加することができず今回2年ぶりの参加となったパラモトライダーの関口和正さんは「ゆったり景色を見ながら走っていると本当に気持ちよくて、コーナーでバックミラーを見ると仲間たちが後ろを走っていてツーリングしているその醍醐味を味わいながら、半分涙を流しながら楽しませていただきました。皆さんのサポートに心から感謝いたします、ありがとうございました」とコメントしてくれた。

 無事に事故なく走行を終えることができた。SSPの青木治親代表は「無事に今日という日を迎えられて、事故もなく終えることができたということは、このSSPがまた大きな一歩を踏み出せたのだと思います。これまでもこれからも、この箱根は「みんなでツーリングをする」という目標の場所です。ですので、来年以降も続けられる限り続けていきたいと思っています。その時はまた皆さん協力していただきたいと思います。よろしくお願いします」とコメントした。

 

パラモトライダーとその仲間のライダー、そしてボランティアスタッフ、総勢170名近いスタッフがこのイベントに携わることとなった。

 

 

SSPに青木3兄弟は、テクニカルアドバイザー(宣篤)、専属パラモトライダー(拓磨)、代表理事(治親)とそれぞれかかわっているが、3人がそろうことは少ない。

 

一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(SSP)

公式ページ:https://ssp.ne.jp/

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/426664/

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