BMWグループは2025年よりドイツ国内で製造するディーゼル車に工場出荷時の燃料として「HVO100」バイオ燃料を充填する。採用するのはネステ社のリニューアブル・ディーゼルで、BMWの工場物流用のトラックでは既に実績がある再生可能燃料だ。
また、合成燃料(eフューエル)の普及を目指す「eフューエル・アライアンス」への加盟も発表しており、CO2削減のために、電動化だけではないあらゆる技術パスを追求している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/BMW Group
BMWグループが工場出荷時のディーゼル車にHVO100燃料
BMWグループは2024年12月12日、ドイツで生産するディーゼル車の工場出荷時に充填する燃料として、再生可能ディーゼル(RD=リニューアブル・ディーゼル)の「HVO100」を採用すると発表した。
同社は技術に対してオープンであることは何よりも重要としており、パワートレーン技術だけでなく、利用可能な全ての技術が必要だという。RDのような化石燃料に依存しない燃料の使用は、サプライチェーンからのCO2削減につながる。
BMWの取締役会長、オリバー・ツィプセ氏はプレスリリースの中で次のようにコメントしている。
「環境を守るためには、あらゆる部門からCO2を削減する必要があり、(新型車だけでなく)約2.5億台あるとされる欧州の既存車からの排出削減も重要です。RDの利用拡大により既存車からの排出バランスを大きく改善できます。
私たちは2025年1月からドイツで生産する全てのディーゼルモデルに、『HVO100』燃料をディーラー納品前に充填します。この燃料は全体として最大90%のCO2排出量を削減可能なディーゼル代替燃料です」。
HVOは”Hydrotreated Vegetable Oil”の略で、「水素化処理された植物油」を意味する。軽油の代わりにディーゼルエンジンで燃焼できる再生可能燃料だ。「FAME」など従来のバイオディーゼルとは異なり、エンジン側の改修が不要なドロップイン燃料でもある。
また「100」は軽油と混合しない100%の純粋なHVOを使用することを示している。
BMWが採用するのはフィンランドに本社を置くネステ社の「ネステMYリニューアブル・ディーゼル」で、いずれもドイツの4工場(ミュンヘン、ディンゴルフィング、レーゲンスブルク、ライプツィヒ)で使用する。これらの工場は、BMWグループのディーゼル車の50%以上を製造している。
工場物流でもHVOを活用
RDは軽油と比較してウェルtoホイール(燃料のライフサイクル全体)で温室効果ガスの排出量を90%削減可能とされる。ディーラーに納車される前の工場での燃料の初期充填量は、モデルにもよるが5~8リットルだという。
また、従来のバイオ燃料では食品との競合が問題となったが、RDは廃食用油など様々な再生可能な原材料から生産され、「持続可能性」の基準を満たしている。製造工程でパーム油などを使用せず、食品とも競合しない。
化石燃料と同じように使用できるが、CO2は大幅に削減可能だ。また、その科学的な特性により低温始動時の挙動に優れており、高純度では微生物による汚染にも耐性がある。
BMWグループのディーゼルエンジンはオーストリアのシュタイアー工場で開発され、ほぼ全てがそこで生産されているが、2015年3月から欧州規格EN15940準拠のHVO100燃料の利用が承認されている。
ネステのHVO100燃料は、BMWの工場物流では既に実績があるそうで、2023年3月からRDを利用する物流用のディーゼル車4台がランダウ/イーザールからミュンヘン工場のルートを1日に数回走っていた。
これらのトラックはジャストインタイム方式でミュンヘン工場に部品を供給しているが、その台数も6台に拡大したという。トラックは運送会社・DBシェンカーの保有車両で、1往復あたり約40kmという距離にある工場と倉庫を頻繁に往復している。
新車充填燃料や物流用トラックでのRDの利用拡大に加えて、BMWグループは新たにeフューエル(合成燃料)の普及を目指す「eフューエル・アライアンス」への加盟も発表した。
eフューエルは再生可能なエネルギーで製造した水素と、大気中からキャプチャーしたCO2などから合成する燃料で、こちらも再生可能な代替燃料だ。
アライアンスのパートナーと協力して実用的な規制の枠組みを実現し、再生可能燃料の市場拡大を推進するとしており、こうした協力を通じて、電気駆動を補完する技術パスとしてRDやeフューエルなど再生可能燃料の採用を他の業界にも促していくそうだ。
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