自国で自動車免許を所持している訪日外国人が日本の免許を取得できる「外免切替」の制度。この制度を利用して日本で有効な免許を取得できれば、レンタカーも借りることが出来る。訪日外国人が運転するレンタカーについて加藤博人氏が解説する。
※本稿は2024年11月のものです
文:加藤博人/写真:加藤博人、ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=waraphot@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年12月10日号
■増え続ける訪日外国人の自動車事故
まずは上のグラフをご覧いただきたい。これは内閣府のデータを、総務省が再編集したものだが、折れ線グラフがレンタカー事故全体件数で、こちらは年々減少傾向にある。しかし、それに反比例しているのが、棒グラフの外国人事故件数だ。4年間で2.3倍になっている。
ITARDA(公益財団法人交通事故総合分析センター)の分析によると、都道府県別で見ると、2014~2018年の累計件数で最も事故が多いのが沖縄県(57.3%)、次いで北海道(21.8%)とこの2県で約8割を占める格好となっている。
また、「訪日外国人」「居住外国人」および「日本人」のレンタカーの事故リスクを定量的に論じるために算出した、事故リスクの指標である相対事故率(=交通事故第1当事者数/無過失第2当事者数)は、訪日外国人が13.8と、日本人の2.5に比べて顕著に高いことがわかっている(居住外国人は9.7)。
事故類型別構成割合で見てみると、訪日外国人の事故は「出会い頭」が最も多く25%、「右直」が22%となっており、居住外国人と日本人の割合と比べて高い。
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■なぜ訪日外国人の「一時停止」標識の認識率は低いのか
沖縄県では右直事故、北海道では出会い頭事故が最も多いのだが、特に訪日外国人の事故で問題なのが、一時停止での安全不確認による事故だ。
記憶にある読者もいるかと思うが、2023年1月10日に北海道の上富良野町で、シンガポールから来た一家4人が乗るレンタカーがダンプトラックと出会い頭に衝突、生後4カ月の赤ちゃんと母親の2人が死亡、運転していた父親と3歳の長女もケガをした。
この事故の原因も、レンタカー側にあった一時停止の標識を見過ごしたことが原因とされている。高い速度域の北海道では、死亡事故になりやすいのだ。
2020年に総務省が訪日外国人を対象に行った、「日本の各交通ルール等の認知状況」でも「一時停止標識」の正答率は最も低い29.9%。約7割の訪日外国人が一時停止の標識を認識できていないという驚愕の結果が出ている。
そもそも、なぜ訪日外国人は一時停止の標識が認識できないのか? と疑問に思う方もいるだろう。その理由は、一時停止の標識が日本独自のものだからだ。
実は世界的に見ると、一時停止の標識の形は八角形が一般的。下向きの三角形を採用しているのは日本くらいだ(かつては日本も八角形を採用していたのだが)。そのうえ、「STOP」ではなく「止まれ」と日本語で書かれているから、訪日外国人が見過ごしやすいと分析されている。
日本で運転するんだから、標識くらいきちんと覚えろよ……と憤慨する声ももちろんあるだろうが、日本人も海外で運転する時に、すべての標識を覚えているわけではないので、強くは言えない。
とはいえ、重大な事故につながる見落としになるので、レンタカー会社などには、啓蒙を強くお願いしたい案件であることは間違いない。
自治体側もこの点については問題視しているようで、富良野市などでは一時停止の標識に、「STOP」と書かれた補助標識や、海外で採用される八角形のものを補助標識として付けて、認識しやすくする努力も行っている。
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■訪日外国人と事故を起こしてしまった場合
さて、そんな訪日外国人と万が一事故を起こしてしまった場合、どう対応するべきだろうか?
基本的には日本人との事故同様で、(1)警察に連絡、(2)事故現場を記録、(3)事故相手の情報を確認、(4)保険会社に連絡となる。損害賠償については、相手が個人で任意保険、もしくはレンタカー会社の保険に加入しているかを確認したい。
難しいのは相手が旅行者ということで交渉中に本国に帰国してしまったり、支払い能力がない場合。その時は泣き寝入りで、自らの保険に頼るしかなくなる場合もあるので注意が必要だ。
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