外野からの物言いにより逆にバズってしまい、応募が相当な多数になり命名が遅れる事態となった三重交通の公式キャラクターの名前がついに決定した。その後の動きも含めてお伝えする。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■キャラクターが先で名前は後

命名前の神都ライナー

 三重交通の公式キャラクターは若い男女の同社バス運転士の設定で、先にキャラクターが公開された。しかしここで要らぬ物言いが付いてしまう。それによりファンはどうなることかと固唾を飲んで成り行きを見守った。

 三重交通は特に過剰な反応はせずに着々とエルガデュオに大々的なラッピングを施し、伊勢市で神宮を中心とした輸送に従事させた。しかし名前もないのにキャラクターだけをラッピングするとはなかなか肝が据わっているのが三重交通だ。

 そうして先行したキャラクターの姿と設定だけはファンや地元に浸透していく。その間は名前を公募している状態で、ラッピングされたキャラクター2名は、いわば「名無しの権兵衛」状態で走っていたのだ。

■予想外の応募数に戸惑う?

内宮前に特急として到着したエルガデュオ

 名前を公募したところ、思いのほか応募があり、いざ締め切ってみると同社予想外の応募多数により選定が遅れる旨のアナウンスがあった。要らぬ物言い騒動でかえって全国にニュースとして知れ渡り、応募多数となったのかもしれない。

 年度替わりの4月前に公開するのではないかという下馬評を無視した形で、4月16日にようやく名前が決定した。しかし決定した後の動向は謎のままだ。

■けって~い!!

神都あかり23歳

 決定した名前は、女性が伸都あかり(しんと あかり)、23歳、157㎝、体重秘密、性格は明るく前向き、三重県出身、運転士2年目で、生粋の三重県人、父が三重交通の運転士、小さいころから夢であるバス運転士になった。というのが設定だ。

 一方、男性は鈴鹿翔琉(すずか かける)、28歳、180cm、65kg。まじめで几帳面、面倒見がよく優しい。三重県出身で運転士6年面。無事故無違反の模範社員で、バスや路線のことは何でも知っているバスファン。乗客にも隠れファンが多い。という設定だ。

■その後の動向は?

同じバスが内宮前と伊勢市駅を往復しているので待てば戻ってくる

 同社の創立80周年記念事業として誕生したキャラクターだが、その後に命名式やラッピング車に名前が入るとか、大々的に他のバスにもラッピングがされるとか、車内のどこかに登場するとか、そういった話はない。

 確かに5月12日に同社の中勢営業所で感謝祭が行われるので、その場で何らかのアナウンスがあるのかもしれないが、公式の予定にはない。ただし、名無しのラッピング車であるエルガデュオは展示予定なので、もしかしたら名前入りの新しいラッピングで生まれ変わっている姿を目にできるかもしれない。要らぬ物議をかもしただけに、今後の動向や活躍、あるいは公式グッズの販売が楽しみだ。

■二次元は日本のよき文化

 ところで記者のオピニオンとして、美少女系キャラクターが登場すると決まって噛みつかれるのが最近の風潮だと感じる。ことの善し悪しは別として、そういうキャラクターをはじめとした著作物や、それらをもとにしたフィギュア等の文化は、もはや日本のお家芸といっても過言ではないだろう。

 「二次元」などという無機質だがどこか暖かいいわゆる「ヲタ」を生み出したのも日本の文化だ。日本人よりも欧米人の方が多様性にうるさいのは言うまでもないが、そんな大量に来日している観光客からクレームが殺到したなどという話は聞いたことがない。

 多くの外国人が訪問する神宮に行くには、特に内宮はバスしか選択肢がない状態でキャラクターが大々的に描かれたラッピング車に文句をつけられたニュースを知らない。

 多くの主張や考えはあって当たり前でそれを認めるのが多様性であり、これは基本的にお互い様の精神だ。それを文化的背景や、楽しみにしているファンや県民をよそに一方向からのみの物言いでは支持されないだろう。実際に物言い騒ぎが発信源となり、いい宣伝になってしまったのは皮肉としか言いようがない。

 そんなことよりもバスファンとしては、2名のキャラクターが進化をして、「バスに乗れば会える」人気者になりバスに乗車する機会を増やす原動力になって活躍してほしいと願うばかりだ。

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