北米最大手のトラックメーカー、フレイトライナーの大型トラック「カスケイディア」が累計生産台数100万台に達した。大型トラックがシリーズ累計で100万台に到達するのは北米初の快挙だ。

 技術開発に積極的な米国だが、世界初の公道での自動運転免許を取得した「インスピレーション」トラック(2015年)もカスケイディアがベースだった。米国政府が資金提供する「スーパートラック」プロジェクトでは、同車がダイムラーグループの先進技術の実験台となっている。

 2022年からはバッテリーEVの「eカスケイディア」も量産化を開始するなど、米国で最も売れたトラックは、常に革新を模索している。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG

フレイトライナー「カスケイディア」が100万台

北米以外にもボンネットタイプの大型トラックが走っている市場はある。オーストラリアもその一つで、右ハンドルのカスケイディアが導入されている

 ダイムラー・トラックは、同社傘下のトラックメーカーで米国オレゴン州を本拠とするフレイトライナーの大型トラック「カスケイディア」が、累計製造台数100万台という大台を超えたことを発表した。

 北米市場でクラス8(北米の重量車区分で最も重いクラス)トラックが、シリーズ累計で「7桁」の製造台数に達したのはこれが初めてだ。

 北米の大型トラック市場をリードするフレイトライナー「カスケイディア」は、ドライバーの快適性、安全性、燃費など常に改良を続け、2007年の発売以来、燃費は35%以上向上したという。

 同車はトラックに革新的な機能を搭載するための先駆者でもあった。

 例えば、米国エネルギー省(DOE)の「スーパートラック」イニシアチブでは、ダイムラーグループとして新技術を搭載するためのベース車両に選ばれた。

 このプロジェクトはエネルギー効率の向上をメーカーに促すため、量産型トラックに搭載可能な大型商用車向けの次世代技術に対して複数年に渡る長期投資を行なうものだ(現在は3期目に当たる「スーパートラック3」が行なわれている)。

 また、2022年に発売した電動トラック「eカスケイディア」は米国の50社の顧客による累計走行距離が600万マイル(約1000万km)を超えている。

 将来を見据えた技術の導入にも積極的に取り組んでおり、冗長安全性を備えた自動運転機能を搭載するカスケイディアの開発も進めている。自動運転が確実に機能するためにブレーキやステアリングを自動制御するとともに、仮想ドライバー(自動運転システム)を車両に統合するという設計だ。

 カスケイディアの自動運転機能は2019年からダイムラー・トラック・ノース・アメリカ(DTNA)の独立子会社となっているトルク・ロボティクスが、既に実際の運行による試験を行なっており、道路の安全性における新しい基準となっている。

 DTNAのセールス&マーケティング担当SVP、デイビッド・カーソン氏は次のようにコメントしている。

 「フレイトライナーは80年以上に渡り、お客様のビジネスを成功させるため、その目的に合った革新的なソリューションを提供することに専心してきました。2007年に弊社がカスケイディアをローンチした時も、まさにそのためにトラックを設計しました。

 北米市場で初めて100万台に到達するまで、カスケイディアとフレイトライナーを信頼してくださったお客様に本当に感謝しています」。

 北米で500を超えるディーラーネットワークがカスケイディアの販売とサービスを支えている。

歴代「カスケイディア」の開発史

第1世代のカスケイディア(2007年)。従来の「センチュリー」大型トラックの後継車

2007年 : DD15型エンジンを搭載した第1世代のカスケイディアがデビュー。クラス8トラック「センチュリー」に代わる大型車として新規開発されたカスケイディアは、デトロイト・ディーゼルのDD15型ディーゼルエンジンプラットフォームを採用し、業界最高水準のパフォーマンス、燃費、出力をもたらした。

2012年 : 第2世代に相当する「カスケイディア・エボリューション」発売。燃費向上を目指し、機械式自動化トランスミッション(AMT)のデトロイト製「DT12」が導入され、AT車の操縦性とMT車の効率性の両立を可能とした。

2013年 : デトロイト・コネクト導入。北米の大型トラックメーカーとしては初めてカスケイディアには工場出荷時からコネクティビティ機能が搭載された。

2015年 : デトロイト・アシュアランス導入。同社製パワートレーンの優れた安全性とパフォーマンスを保証する、メーカー純正としては初めての安全システムのパッケージだ。

同年、カスケイディアをベースとする「インスピレーション」トラックが公開された。同車に対してネバダ州は公道での自律・自動運転が可能なライセンスを発給し、世界初の公道での大型トラックの自動運転が行なわれ、ラスベガス近郊のインターステーツ15号線に世界中から報道陣や関係者が集まった。

同じく2015年、フレイトライナー/DTNAの「スーパートラックI」が公開された。プロジェクトの当初目標(輸送効率の50%向上)を大幅に上回り、2009年のトラックに対して、プラス115%(2.15倍)という効率向上を実現した。最新技術の「全部載せ」により約30トンを積載した高速道路での実燃費として5.2km/Lを記録した。

2017年 : 第3世代カスケイディアがローンチされる。空力性能、先進安全装備、コネクティビティ、ドライバーの快適性などが強化され、運送会社やドライバーの多様なニーズに応えた。

2019年 : レベル2自動運転機能を搭載した第4世代カスケイディアが登場。北米市場の量産型大型トラックとして初めてSAEレベル2相当の自動運転機能を搭載し、システムによるラテラル(ステアリング)/ロンジチューディナル(加減速)制御が可能になった。

同年、右ハンドル車(RHD)を設定。オーストラリアなど国際市場向け。

2022年 : eカスケイディアの生産開始。バッテリーEVのeカスケイディアは2019年に実用試験のために公開されているが、2022年に量産を開始した。

2023年 : スーパートラックIIを公開。DOEが資金提供するスーパートラック・プログラムの第2期の成果だ。なおフレイトライナーは第3期にも参加しており、おそらく電動になるであろう「スーパートラックIII」は2027年に公開される予定。

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