暴力行為防止を呼び掛ける2022年度の啓発ポスター=日本民営鉄道協会提供

 口論の仲裁に入った駅員に頭突き。終電を告げた駅員をキック――。私鉄各社が加盟する「日本民営鉄道協会」は21日、鉄道利用者による駅員や乗務員への暴力行為が2023年度は144件だったと発表した。

 3年連続の増加で、協会は「新型コロナウイルス禍が落ち着き、飲酒や外出の機会が増えたことが関係しているのではないか」としている。

 協会が加盟16社に調査した。全体の6割にあたる88件は加害者が飲酒している事例だった。

 時間帯は午後10時~終電の深夜が54件と最も多く、午後5~10時が35件、午前9時~午後5時が34件で続いた。主な発生場所は、ホーム60件▽改札48件▽車内10件――だった。

 被害に遭った経緯を尋ねたところ、「理由なく突然に」が34件(24%)で最多。「酩酊(めいてい)者に近づいて」(22%)、「迷惑行為を注意して」(19%)との回答もあった。

 具体例としては、金曜深夜、終電を過ぎた駅のホームに向かっていた20代男性客に、複数の駅員が営業終了を告げたところ、男性客が突然暴れ出し、駅員2人が腹を蹴られて打撲したケースがあった。

 また、月曜夜、「券売機でお金を入れたのに切符が出てこない。説明しろ」と70代の男性客が改札口付近でドア越しに駅員に迫り、開かないドアに何度もぶつかって激怒。謝罪して説明した駅員が殴られ、胸を打撲した。

 これらの事例ではいずれも男性客が酔っ払っていたとみられるが、しらふとされる客同士がホーム上で口論となり、仲裁に入った駅員が頭突きをされたという報告も寄せられた。

藤岡弘、さんが駅係員への暴力行為防止を呼び掛ける2021年度の啓発ポスター=日本民営鉄道協会提供

 協会は駅構内や列車内に啓発ポスターを掲示して対策を講じている。

 担当者は「飲酒をはじめ、意思のコントロールができない状態で起きていることが多い。どう減らしていくか検討しなくてはならない」と頭を抱えている。【長屋美乃里】

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