日本一の梅の産地和歌山県では、南高梅の収穫が始まりました。今年はJAがいつにも増して「梅を買ってほしい」と消費者に呼び掛けています。その理由とは…

■暖冬・ひょう・カメムシが影響 南高梅は例年6割ほどの生産量と予想

27日、和歌山県田辺市のお店では、
【青梅を買いに来た人】「私は梅シロップにするんですけど、お酒飲めないので。早めに来て買えてよかったです」

梅シロップに梅酒に梅干し。ことしも梅仕事のシーズンがやってきました。

和歌山県田辺市で20年以上続く寄本農園。毎年、この時期に梅の収穫を行っています。

しかし…
【寄本農園 寄本裕貴さん】「こんな年は初めてなぐらいです。15年やってきて初めてですかね」

今年は、暖冬の影響で、開花の時期が早まり、不完全な状態の花が増加し、実が激減。寄本さんが所属するJA紀南では、南高梅の生産予想量は例年の約6割ほどだということです。

さらに今年は、3月に降ったひょうの影響で多くの梅の実に傷がつき、他にも梅の実の汁を吸うカメムシが大量発生しました。

JA紀南では例年、傷がない梅が全体の約6割から7割を占めますが、今年はその割合が半分ほどになる見込みだということです。

こうした影響で、価格も高騰。例年、1キロあたり約700円だったところ、今年は1200円から1300円ほどになる予想ですが、全体量が少ないため、農家の売り上げは伸びないといいます。

【寄本農園 寄本裕貴さん】「単価はよくてもやっぱり全体量が少ないので、売り上げは多分上がらないと思います。(収入は)例年の3割~4割だと思います」

傷はあっても味には影響がないということで、JAグループ和歌山では、チラシを作成。消費者に理解を求め、梅ジュースや梅酒などを作ってみてはと呼び掛けています。

■傷ついた梅だけ詰めた“訳アリ品”の販売始めたお店も

こうした状況の中、奮闘している人もいます。以前、「newsランナー」でも取材した梅農家・梅干し店の「梅ボーイズ」です。

(選別しながら)「大体いけそう」「いい感じです」

梅ボーイズでは、傷がついてしまった梅だけを詰めた“訳アリ品”の販売を始めました。「傷がついていても構わない」と全国から注文が殺到。

【梅ボーイズ リーダー 山本将志郎さん】「『もともと私は全然気にしないから、訳あり品作ってくれてうれしい』という声もあります。梅仕事をされる方は、一粒一粒、大事に愛情もって漬けてくれているので、一個一個、個性と思って見てもらえたら」

梅ボーイズの山本さんによると、おすすめはさわやかな酸味の梅ジュース作り。傷の部分をそげば、梅干しにしてもおいしいということです。

■味に問題なければ従来と“品質”の考え方を変えることも必要か

暖冬が続くと農作物に影響が及ぶ恐れがあります。

【共同通信社 編集委員 太田昌克さん】「なんとか応援したいですね。いま世界的に和食ブームです。その和食を支えてきたのが紀州の梅だったりするわけです。日本の食文化を体現してきた生産地ですので、日本全国で応援したいですね」

ことしは暖冬に加え、ひょうが降り、カメムシが発生し、“トリプルパンチ”で生産者を悩ませています。

【関西テレビ 加藤報道デスク】「3月に降ったひょうはかなりの影響があって、和歌山だけでなく、兵庫県なども影響を受けています。さらにカメムシの発生もあって被害がすごく多いと。
 暖冬になると実が生育しないということで、JAではまずできることからやっていこうということで、今回の暖冬に耐えた木を調べ始めているそうです。今後、品種改良をして育てていけるものを考えているとのことです。ただ10年~15年かかるということで、なかなか大変だと思います」

従来と同じ品質の考え方では難しいことにもなりますから、味に問題がないのであれば、これまでのスタンダードとは考え方を変えることも一つの手かもしれません。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月27日放送)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。