完成した「百社一首」を手にするゼミ生の黛杏奈さん(左)と黛音羽さん=埼玉県深谷市役所で2024年5月27日、隈元浩彦撮影

 埼玉県深谷市出身の実業家、渋沢栄一翁の新1万円札が7月に発行されるのを記念して、地元の埼玉工業大は、栄一翁ゆかりの企業にちなんだカードゲームを商品化した。名付けて「百社一首」。「百人一首の日」に当たる27日、同市役所で商品発表記者会見を開き、学生と共に開発を手掛けた同大の本吉裕之准教授(48)は「ゆかりの企業と接し、偉大さを改めて確認した。まずは渋沢さんにささげたい」と話した。【隈元浩彦】

 栄一翁は生涯に500社を超える企業の設立などに関わったとされ、今も186社が事業を続けているという。このうち66社が協力した。

 百人一首は読み上げられた「上の句」からそれに合う札を探すが、「百社一首」の読み札は各企業の理念に栄一翁の業績と思想を織り込み、「五・七・五・七・七」ふうにまとめたもの。そこから類推して企業のロゴマークの札を取るのが基本ルールだ。

 例えば、三井物産は「徳の渋沢 智恵の益田 暮らしづくりから 国づくり」といった具合で、ゆかりの経営者(益田孝)の名前も盛り込んだ。りそなグループの「道徳を もって倹約 貯蓄をし 恒産の基を作り出す 揺るぎない絆 共鳴す」のように、かなり字余りの読み札も。

 開発の発端は2023年6月、深谷市の小島進市長が「栄一翁にちなんだ商品をつくれないだろうか」と、地方創生に取り組む本吉さんに相談したこと。さっそく3年生(現4年生)のゼミ生11人とともに思案。ゆかりの企業にちなんだカードゲームの制作に取りかかり、学生たちが手分けして各企業に連絡し協力を求めた。

 読み札の内容は学生たちが企業の歴史を学んで作成した。企業側から何度となくダメ出しが出ることもあったという。

 こうして完成した「百社一首」。ケースは1928年版の栄一翁の「論語と算盤(そろばん)」の外箱デザインを踏襲、「百社一首」の文字も翁の手稿から抽出した。2000セット分の制作費など約400万円は、地元のたつみ印刷が「地域貢献できるのであれば」と全面協力した。

 本吉さんは「66社ですが増やしていきたいし、いずれは深谷の地で百社一首大会を開きたい」と夢を膨らませ、「学生たちが成長したのがうれしいですね」と口元を緩める。4年生の黛杏奈さん(21)は「正直、企業さんとの連絡は大変でした。でも、こうして形になって達成感を味わっています」と語った。

 「百社一首」は税込み2750円。6月30日から「道の駅おかべ」などで販売。同17日から特設サイト(https://www.tatsumi-insatsu.co.jp/100sya-isshu/)でも予約を受け付ける。販売利益はすべて市の子ども福祉基金に寄贈するという。

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