がん患者や家族が悩みを寄せる「がん電話相談」。子宮体がんが15年ぶりに再発した59歳の患者からの相談に、がん研有明病院元婦人科部長の瀧澤憲医師が助言します。

――約15年前の平成20年に子宮体がんを手術と術後化学療法で治療しました。昨年11月に性器出血が続き、手術を担当した主治医を受診。綿棒でこすると、1・5センチくらいの膣壁ポリープが剥脱(はくだつ)しました。病理検査の結果、子宮体がんに類似した腺がんで、転移再発と言われました。PET―CT検査ではポリープ基部の膣壁にだけ陽性所見がありました。子宮体がんが15年もたってから再発することがあるのでしょうか。

「子宮体がんが膣壁に転移することは珍しくありません。手術の際、がんがこぼれ落ちて生着したり、子宮からリンパ路を通って膣壁にたどりついたりして再発しますが、多くは2年以内に起こります。膣壁の粘膜は扁平(へんぺい)上皮細胞で覆われていて、がんが原発で発生しにくく、原発腺がんは極めてまれです。よって今回は15年ぶりに体がんの膣壁転移再発が起きたと考えます」

――PET―CTでは膣壁にしか陽性所見がありませんでした。化学療法(抗がん剤治療)を受けたほうがよいでしょうか。

「再発がんの治療方針を決定する場合、①初回の治療からどれくらいの時間が経過しているか②再発個数が単発か、多発か③再発部位は局所(原発部位と同じか近く)のみか、遠隔転移を伴うか―が重要な評価基準です。数年以上後の同じ部位での再発で、遠隔転移がなければ、化学療法ではなく、局所治療、すなわち手術か放射線治療が優先されます」

――手術、放射線治療のどちらがよいですか。

「今回は膣壁にがん性ポリープの基部が残存している可能性がある上、リンパの通り道を経て、膣の他の部位に潜伏転移しているかもしれません。しかし画像検査では膣壁外にがんが進展している所見がないので、膣腔全体を腔内照射で放射線治療するのが最優先でしょう。膣腔の粘膜全面をカバーするようにシリンダー状の器具を装着して、膣腔全体を照射します。通常は週1回のペースで4回、膣粘膜の深さ5ミリくらいまで照射すれば根治が望めます。腔内照射の放射線は、膀胱(ぼうこう)や直腸にも多少は散乱しながら当たりますが、ぼうこうや直腸と膣の間に穴(瘻孔=ろうこう)ができることはありません。照射後、膣の弾力性などが損なわれますが、性交渉は可能です」

――他にも遠隔転移がないか心配です。放射線治療だけでなく化学療法も受けたほうがよいですか。

「最後の化学療法から1年以内の早期再発ではなく、15年を経た晩期再発なので、腔内照射の前に化学療法をするのは勧められません。腔内照射で制御できたかどうかを、まずは見極めましょう。制御できたら化学療法は不要です。新たな再発も心配でしょうが、半年ごとに画像検査を行いながら、慎重に経過観察をするのがよいと思います。2年を経て再々発が起きなければ安心できるでしょう」


「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日・振替休日を除く)午前11時~午後3時に実施しています。電話は03・5531・0110、03・5531・0133。相談はカウンセラーが無料で受け付けます。相談内容を医師が検討し、産経紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。

回答を担当した瀧澤憲医師

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