美村里江さん

今回はちょっと「ゾッ」とした話なので、薄目で遠目に読んでいただければと思う。心霊とはまた違った、身近で具体的なホラーである。

本格的に暖かくなってくると、私は桜や野の花に浮かれつつ、心の底では「目張り」のことを考えている。同時期に爆発的に増えてくるダーニーこと「ダニ」が気掛かりで、家中いぶす気満々。大事な水生生物たちを殺虫剤から守るため、ゴミ袋と粘着テープで水槽本体と周辺へ、綿密な目張り工作が必須なのだ(水槽のあるリビングではたかないが、殺虫剤は甲殻類のエビやシャコも瞬殺なので念を入れる)。

煙タイプではないミスト状やスプレー、シート内部に誘導してそのまま捨てる物などいろいろな商品があるが、定期的に煙タイプをやるのが一番効く気がしている。3月、6月、9月、できたら12月にも行い、年3~4回の恒例行事だ。

わが家はそこまで不衛生な環境ではなく、1回くらい逃しても大丈夫だろう。しかし、ダニだけはもう嫌だ、という強烈な学びが過去にあったのだ。

ある知人宅での、初夏の夜の話である。

細かい事情は省くが、年に何度かそこに宿泊させてもらう約束で、家主に数万円を渡した前提があった。しかし、いつ行っても「どこに寝れば…」という状態で、大量に物が散乱し、畳での雑魚寝もままならなかった。

家主は具合が悪いと寝ていたため、自分の寝る小スペースだけなんとか作るべく、仕事で疲れた体にむち打って3時間ほど、周囲のゴミその他を片付けた。

ビンテージ家具のように渋く日焼けしたアイスの「当たり棒」を発見したとき、果たしていつからこの状態なんだとめまいがしたが、疲れも限界。露出した畳を拭き、横向きで2時間ほど仮眠した。

その時点でなかなか怖い体験だったが、真の恐怖は翌日の夜に顔を出した。なんだか腕が、おなかが、足が猛烈に…。鏡の前で服をまくると…。

畳に接した右半身だけ、見事にダニの大群に食われていた。その数100以上。

そら具合も悪くなるよ! と心中で家主に猛ツッコミ。同時に、これは清掃とは別の根深い問題があると痛感し、以後の交流は一切諦めた。

こんなヒト怖、ムシ怖の経験がよぎり、今もダニには最大火力、手抜きできない私である。

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