囲碁の現役最年長棋士、杉内寿子(かずこ)八段(97)が11日、第51期天元戦予選で公式戦対局の最年長記録(97歳1カ月5日)を更新した。これまでの記録は、平成29年に亡くなった杉内八段の夫、雅男九段の97歳0カ月13日。女流名人4連覇の実績を持つ杉内八段には、雅男九段が達成した最年長勝利記録(96歳10カ月4日)更新への期待もかかる。
昭和2年生まれの杉内八段は、戦時下の同17年にプロ入り。20年5月の空襲で当時永田町にあった日本棋院会館が焼失する2日前にも、同所で対局していた。戦後は28年から女流選手権で4連覇するなど活躍。還暦を過ぎた後も、平成3年から女流名人戦で4連覇を果たすなどタイトル獲得数は10期を数え、踏み込みのいい棋風で知られる。
11日の対局には、襟のないグレーのジャケットを着用し、胸に桜のブローチをつけた春らしい装いで臨んだ。結果は44歳年下の森田道博九段(53)の黒番中押し勝ちで、最年長勝利記録の更新は持ち越しとなったが、杉内八段は「感慨無量でございます」とコメント。体調の管理については、「なるべく歩くことを心がけている」という。
かつて杉内八段主宰の囲碁サロン「石寿会」で指導碁スタッフを務めた元院生の男性によると、杉内八段はこの日の対局後、やや疲労の色も見せていたが、「碁盤の前に座るとしゃきっとする」と話したという。誰よりも囲碁界を知る女傑は、老いてなお意気軒高だ。(村嶋和樹)
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