三重県名張市の人気観光スポット、赤目四十八滝の玄関口で40年以上営業を続けてきた日本サンショウウオセンターが2024年4月、「赤目四十滝水族館」としてリニューアルオープンした。
館長に抜擢されたのは入社2年目の朝田光祐さん、22歳だ。若き館長は地元に生息する魚を集めて唯一無二の水族館を目指して奮闘している。
■観光名所の玄関口に誕生した水族館 館長は大抜擢の22歳
三重県名張市の観光名所、赤目四十八滝。その渓谷の玄関口で40年以上営業を続けてきた日本オオサンショウウオセンターが2024年4月、「赤目滝水族館」としてリニューアルオープンした。
この記事の画像(19枚)3月、新しくなる施設でペンキを塗っていたのは、新館長の朝田光祐さん(22)だ。
水族館のスタッフ:
朝田さん、顔エグイほど(ペンキが)付いていますよ。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
そんなもんでしょ、素人がやってるんで。(カメラに向かって)でも顔面に付いてる方がやってる感ありますよね。絵になるでしょ。
朝田さんは大阪にある水生生物の専門学校を卒業し2023年4月、日本サンショウウオセンターに入社した。豊富な知識と仕事への熱量を買われ、わずか1年で新館長に大抜擢された。
この日は、水族館のある名張市との打合せだ。
名張市の職員:
よく水族館でやっているナイトツアーを、赤目滝水族館でできないかな?日本で唯一の体験ができるコンテンツを作れれば、夜やからゆくゆくは宿泊にも繋がったり、色んな事に繋ぎ合わせられる気がして。多分朝田君1人やったら絶対アカンと思うからそれのガイド育成という委託も入れてしまって。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
ナイトツアーはアリやと思います。
名張市の職員:
彼の熱い思いがあるから、それを形に出来ればいいなと思うので。一緒にやっていて楽しいですし、彼の意見を聞いていたら新しいアイデアが出てくるので、それをなんとか一緒にやりたいなと思いますね。
■地元の魚を展示したい…館長自ら展示生物を「捕獲」に
通常、水族館の魚は業者から仕入れるが、朝田さんは自ら地元の魚を「捕獲」しにでかける。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
今日は田んぼにタウナギを捕りに行きます。気持ち悪いと言われている魚なんですけど、田んぼの土に潜る習性がある魚で、いろんな水族館ではチンアナゴとかで展示しているんですけど、ウチの“チンアナゴ枠”はタウナギかなと。
朝田さんは、地元に生息する魚を集めて水族館で展示したいと考えていた。
タウナギは田んぼの周りを取り囲む、水が少し溜まった「あぜ際」に生息している事が多いという。何度もスコップで掘って、かき出した土の中にいないか、チェックする。
泥水の中に手を突っ込み、タウナギがいそうな穴を探すが、およそ2時間、結局この日は見つからなかった。
生物の採取は夜も行っている。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
あ!いますね。動いていますね。大量にアカハライモリがいますね。それ、だいぶ青いです。全然違う色が。産卵時期になると尾っぽが青色になって、尻尾を震わせてメスに求愛行動をするんです。
さらに…。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
これ、卵ちゃうん?卵、卵、めっちゃあるよ。これ全部一面、ヒキガエルの卵です。
早速、取ろうとしたところ…滑って足が池に。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
最悪…最悪や。気抜いた。
生き物のことになると、子供のように夢中だ。
水槽のレイアウトも、自分の手で仕上げる。朝田さんが目指すのは、これまで見たことのない唯一無二の水族館だ。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
目の前に渓谷や滝がある水族館は、なかなか作ろうと思って作れるものじゃないですし、お金かけたら作れる物でもないと思うんですね。渓谷も水族館の一部であり、この水族館も渓谷の一部であるというような直結型の施設に出来れば、ジュラシックパークじゃないですけど、そういう施設って僕が考える中で日本に無いと思っている。
オープンまであと2週間。前回取れなかったタウナギのリベンジにやってきた。地元の人の協力で、ショベルカーの助けを借りながら自らもスコップで掘り進める。
地元の人:
もっと深く!重労働やで。そうそう、それぐらい。それぐらい深く掘ったら出てくるわ。
すると…。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
これやない?これやない?これやない?これやない?これこれこれこれ!ミミズかと思ったけど。タウナギや!めっちゃ小っちゃいよ。
この後、次々とタウナギを発見した。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
小学生とか中学生にこんな仕事があると知ってもらいたい。だって生き物探す仕事ってあんの?知らないですよね、こんな仕事。知っていたら、目指す人がめっちゃ増えるんじゃないかな。
■赤目の渓谷を歩くのが楽しくなる水族館
展示する生物も、建物も一新した「赤目滝水族館」。オープン直前にその見どころを紹介してもらった。
まるで岩と一体化したかのようなオオサンショウウオ。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
実際ココにお客さんが来た時に、え?何がおるの?となると思うんですよ。実は岩棚の下の奥にオオサンショウウオがいます。よく見てもらうとわかるんですけど。パッと見てわからないんですけど、気づいたらわかるじゃないですか、そこに姿があって。それが実際のオオサンショウウオの姿なんですよね。
次に紹介してくれたのが、アマゴだ。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
これはアマゴという魚なんですけど。日本の渓流魚で上流域のキレイな水とか冷たい水のところにいる冷水魚といわれている魚。水流を(右から左に)流しているので、アマゴが水流に逆らって泳ぐんですよ。だから正面から見るとアマゴの横面が見えるんですけど、水槽の右面から見ると、アマゴの顔面、正面からもアマゴが見える感じになっています
そして、朝田さんのイチオシ、タウナギだ。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
僕が初めて考えたのかどうかは調べてないのでわからないんですけど、タウナギの水槽で、ちょっと見てもらったらわかるんですけど、このタケノコみたいなやつが(タウナギ)。息を吸う時に水面に上がってくるので、その時は頭を伸ばしてもう完全にチンアナゴでしょ。
朝田さんは「渓谷に入る前に、こんなコケがあるのかとか、前もって知識をつけてもらって、渓谷内で今まで10分で歩いていた道が、見るところが多くなるので20分30分かかって、歩く道になるときっと面白い」と話している。
■ついに水族館オープン 初日から多くの来場者も館長「まだ最初の1歩」
4月20日、赤目滝水族館がオープンし、朝からたくさんの人が訪れた。
男性の来場者:
自然の中に水族館があるというはなかなかないから、子供たちも普段、家でギンブナとか飼っているんですけど、やっぱり全然雰囲気も違うし、見ていて癒される。
女性の来場者:
赤目の自然を上手くまとめて紹介されているので、本当に赤目滝の水族館って感じがしてね。孫を今まで赤目滝に連れてきたことがないんです。でも今度は是非連れて来たいなと思っています。
そしてタウナギの前にも見物客が集まっていた。
男の子:
タウナギが、土にチンアナゴみたいに刺さっていた事にビックリしました。
女性:
タウナギ自体は展示は(他には)無いよね。
一緒にいた男性:
初めてですね。全国の水族館見たけど。
水族館で予習した後は、来場客は自然の水族館へ。
赤目滝水族館の朝田光祐館長:
いや~ホッとしています。あんまり表にはプレッシャーとか感じている感じはなかったと思うんですけど、気持ちはすごく軽くなりました。今これがようやく、最初の一歩になっただけなので、もっといろんな展示物の解説パネルであったり、渓谷との関連性を持つ部分ももっと深めていきたいと思いますし、私自身も出来る限り接客したりとか、楽しんでいただきたい。
2024年5月8日放送
(東海テレビ)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。