インタビューに応じる明治大の上野正雄学長=東京都千代田区(酒巻俊介撮影)

明治法律学校として明治14(1881)年に創立された明治大学。建学の精神に「権利自由」「独立自治」を掲げ、143年の歴史を重ねてきた。4月に就任した上野正雄学長は同大で法学を学び、裁判官として経験を積んだ後、教員として大学の歩みに携わってきた。新学長として思い描く未来像や明治ならではの魅力について聞いた。(聞き手・宮田奈津子)

--大学10学部・大学院16研究科などを擁する総合大学に成長した

「学生数は約3万5000人。教育研究分野も多岐にわたるが、時代に合わせて変化してきたから今がある。一方、建学の精神は変わっていない。「権利自由、独立自治」はなぜ必要なのか-。日本でも世界でも、この精神はまだ達成されていないように思う。建学の精神をこれからも追求し、実現していくことに大学の存在意義がある」

--学生、教員…と立場を変えて大学をみてきた。明治の魅力とは

「地方から上京して入学したが、学生や教員、事務職員までが親しみやすく、すぐに居場所が見つかった。全国から学生が集まっていたせいか、異なる背景を尊重する雰囲気があった。今は首都圏の学生が増えたが、居心地の良さは変わらないのではないか」

--どのような大学生活だったか

「法律の分野では、論理的に議論を積み上げた先に結論がある。正解が一つではない学問を知り、おもしろいと感じた。犯罪学の授業に出合い、裁判官としての道につながった。大学では人との出会いや知識、経験などを得られる。これからも、多様な学生、方言や言語が集い、巣立っていく場所であってほしい」

--近年は国際教育にも力を入れている

「学生の50%を海外に送り出すといった数値目標はあるが、国際化は日常的なものになり、量から質を考える時期に来ている。大学の役割は教育と研究、社会貢献。その3つの柱に国際という視点を結びつけて考えていく必要がある」

--新学長としての思いは

「バランスのとれた大学運営を目指していく。学生や教員、職員などすべての個を大切にすることが、大学の多様性を豊かにするのではないだろうか。明治ならではの規模を学際的な教育研究に生かし、総合大学で学ぶ醍醐味を感じてもらえるように、各学部が先進性や独自性を発揮し、社会に求められるように支援し、50年、100年後の大学につなげていきたい」

うえの・まさお 昭和32年生まれ。同55年、明治大学法学部卒業。司法研修所司法修習生を経て、平成6年から裁判所裁判官として9年間勤務。同15年に同大助教授に就任し、法学部教授、副学長(広報担当)、学長室専門員長、法学部長を歴任。専門は犯罪学、犯罪者処遇法、少年法。

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