質の高い餌やサプリは基本中の基本。知的な遊びで刺激したり、歯磨きをしてやったりと飼い主のやれることは多い OKSANA KUZNETSOVA/ISTOCK

<避けられない悲しい別れを少しでも先延ばしにするために、飼い主が今からできる犬のための健康増進法は>

犬は人間の親友と言われるが、寿命は人間よりもずっと短い。そして死んでしまうと、飼い主の心にぽっかり大きな穴をあける。

愛犬家団体アメリカン・ケネル・クラブ(AKC)によると、小型犬の平均寿命は10~15年。体が大きくなるほど寿命は短くなり、中型犬は10~13年で、大型犬は8~12年だ。世界記録になるくらい長生きしても、人間の寿命を考えれば、飼い主が一緒にいられる時間は極めて短い。

「犬は自分のライフスタイルを設計できない」と、アメリカの著名獣医ピート・ウェダーバーンは言う。「人間が健康なライフスタイルを提供するしかない」。そこでウェダーバーンに、愛犬をなるべく長生きさせてやるための5つのコツを聞いた。

■食生活

「親友」にずっと元気でいてもらうために、まずは最高のドッグフードを選ぶことから始める飼い主は多いだろう。実際、高品質のドッグフードの健康効果は高い。ただ、年齢とともに変化する消化器官に合わせて、餌も変えていくことが重要だ。

犬の健康維持には適切な水分補給も忘れてはいけない。「いつも新鮮な水を飲めるようにしておくこと。ボウルの水は毎日替えることだ」と、ウェダーバーンは言う。

■サプリメント

質の高いドッグフードだけでなく、サプリメントも健康効果が高い。栄養やビタミンのサプリは免疫システムを強化し、適切な消化を促し、関節や骨の健康維持にも役に立つ。

多種多様なサプリの中でも、ウェダーバーンが特に重視するのはオメガ3脂肪酸だ。このサプリ(摂取しやすいのはカプセル)を使うと、犬の心臓や関節、被毛、皮膚、免疫システムの健康に効果があるという。

ドッグフードを変えたり、新しいサプリをあげたりするときは、慣れるまで2カ月ほどかかると考えよう。体が新たな成分をきちんと吸収できるようになるのも、それくらいの時間がかかる。

イギリスの獣医デイジー・メイは、オメガ3脂肪酸のほか、グルコサミンとコンドロイチンの入ったサプリも犬の関節に良いと語る。

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■メンタル面の刺激と充実感

人間と同じように、犬のメンタル面の健康は、肉体的な健康と同じくらい重要だ。

ウェダーバーンは、最近ネットで見かけるリックマット(なめマット)を推奨する。表面がでこぼこのプラスチック板にピーナツバターやつぶしバナナなどを塗り付けておくと、犬はそれをなめている間落ち着き、シャンプーなどをしても動揺することがない。リックマットは、犬にゆっくり餌を食べさせたいときも使われる。

また、パズルをやらせたり、なんらかの訓練をしたりして刺激を与え続けると、犬の問題行動を減らすことができるとメイは語る。

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■歯の健康

人間も歯や口の健康に問題があると、歯が黄ばんだり、口臭がひどくなったり、歯周病のほか心血管疾患や心内膜炎、肺炎につながることがある。犬の場合も同じだと、ウェダーバーンは言う。

「歯垢や歯石がたまると歯周病になったり、歯が抜けたり、深刻な感染症にかかって腎臓や心臓や関節にダメージを与える恐れがある」とメイも語る。「少なくとも週に2~3回は歯を磨き、少なくとも年に1度は動物病院で歯のクリーニングをしてもらうべきだ」

前歯なら飼い主でも磨けるが、奥歯は難しいことが多い。そんなときは専門家も効果を認めるデンタルガムを使うことをウェダーバーンは勧める。ほかにもVOHC(米獣医口腔衛生協議会)のシールが貼られたおやつは、健康効果が科学的に証明されている。

■ストレス要因を減らす

愛犬のことが何より大切な飼い主も、家族旅行や出張で家を空けなければならないことがあるものだ。そして、どんなに飼い犬を一緒に連れて行きたくても、物理的に不可能なことは多い。

そんなときはペットホテルを利用する人もいるだろう。だが、見知らぬ場所で、しかも人間が1対1で世話してくれる時間が限られる環境は、犬にとってストレスになる可能性が高い。「(ペットホテルの)スタッフはいい人たちでも、犬が日常と異なる環境に置かれるのは間違いない」とウェダーバーンは指摘する。

そこで彼が勧めるのは、ペットシッターを雇うことだ。泊まり込みで世話をしてくれるペットシッターを派遣する会社もある。シニア犬は子犬よりも精神的なダメージを受けやすいから、こうしたストレス要因を最小限に抑えることが特に重要だ。

◇ ◇ ◇

これまで述べてきた5つのポイントは、愛犬をできるだけ長生きさせるための基本であり、やれることにはほかにもたくさんある。

なかでもウェダーバーンが強調するのは睡眠だ。「愛犬を溺愛する人も、犬が十分な休息を取れているかには考えが及ばないことが多い」と彼は言う。「(十分な睡眠が取れているかを)気にかけてやることは、とても重要だ」。暖かくて柔らかい犬用ベッドは、休息にも、関節にも良い。

メイは、定期的に動物病院で診察を受けることを強く勧める。年に1度の健康診断と半年に1度のシニアウェルネス診察を受けておくと、総合的な健康状態を獣医が把握し、問題を早期に発見して、それぞれの犬に合った治療法や提案をする役に立つ。

「早期発見は、健康問題を解決する最善の方法だ」

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