東京女子医科大学(東京都新宿区)は2日、入試や採用を巡り同窓会組織「至誠会」が寄付金を受け取っていた問題などを調査していた第三者委員会の報告書を公表した。寄付額をポイント換算し、同窓会から大学に推薦する受験生を選ぶ際に考慮していた。同大で記者会見した第三者委は一連の問題の背景に岩本絹子理事長の目先の金銭に執着する経営手法があったとし「理事長の適格性があったか疑問と言わざるを得ない」と批判した。
報告書は、2020~23年度の同大卒業生親族向けの推薦入試で、面接前の2カ月間に受験生の親族から受け取った寄付の総額が大学で1580万円、至誠会で1940万円に上ると認定。額の大小によって至誠会による推薦順位が逆転し、推薦を受けられなかった受験生も1人いたとした。入試に関連した寄付金収受を禁じる文部科学省の通知に反する可能性があり「妥当とは言いがたい」と強調した。
人件費や受注企業からの還流にも疑い
また、至誠会から大学に出向した岩本氏の側近職員2人への人件費について、大学から業務委託先を経由した支給と至誠会による支給があり「二重払いと評価できる」と指摘。大学発注工事を巡って受注企業から岩本氏の側近職員の関連会社に1億数千万円が還流していた可能性があると認定した。この職員が岩本氏に重用されていたことから「還流に岩本氏が全く関与していなかったとは認めがたい」とした。
第三者委は加えて、岩本氏が教職員の人件費を低く抑えたのに自身の報酬を継続的に増額していたと指摘。大学・病院での教育や研究には理解が乏しかった上、異論を述べる職員らを排除することで「1強体制」をつくって大学のガバナンス(組織統治)機能を封殺したとし、岩本氏の経営責任を「極めて重い」と言及した。
第三者委で委員長を務めた弁護士の山上秀明・元最高検次長検事は、岩本氏が聞き取り調査で責任を認める様子がなかったと明かした。「理事長の進退について述べる立場にはない」としつつ「(報告書の)趣旨を踏まえて法人で(人事を)検討してもらいたい」と述べた。
一方、同大は2日、ホームページ上で第三者委の報告について検討する組織を立ち上げると公表。同大広報担当者は「人選について述べられる状況にはない」と話した。【井川加菜実、遠藤龍、森田采花、斎藤文太郎】
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