JR烏山線(宝積寺―烏山駅、20・4キロ)で、輸送の実態を表す2023年度の「平均通過人員(1日1キロあたりの利用客数)」は1144人と前年度より24人増え、7年ぶりの増加となった。1000人が存続の指標の一つとなっており、沿線の栃木県那須烏山市はあの手この手で利用者増を図っている。
JR東日本は22年、県内では唯一、烏山線を平均通過人員が2000人未満の「利用の少ない線区」として公表した。1000人を下回った場合は、国と鉄道事業者と自治体による協議会を設け、存廃に向けた議論の対象となる。
昨年は開業100周年の機を捉え、山あげ祭のある7月を含めイベントを3回、実施した。また、高校生以下を対象に、定期券代を4分の1補助することを始め、申請すれば5人以上で利用した場合、無料とした。
市職員にも烏山線の利用を呼びかけ、期間中、自己負担で61人が参加した。「渋滞に巻き込まれないで良い」という意見もあった一方、「通勤時間帯でも1時間に1本程度しか運行していない」など課題もあげられた。
今年度も通学補助は継続し、申請すれば3人以上の団体や受験のために利用する場合は1人でも無料とした。
さらに6月には、官民あげて烏山線を存続させるための利用向上委員会を立ち上げた。委員会では、全国で初めて「アキュム」という蓄電池の車両が導入されて今年で10年となることから11月23日に烏山駅周辺でマルシェや八溝そばのPRなどイベントを実施する。
市は広報紙で、存続するため生産年齢人口(15~64歳)の人が「年に5回」は乗ってほしいと呼びかけている。川俣純子市長は7月の記者会見で「1日24人増えると、年間では9000人増える」と述べ「乗って残す」重要性を訴えた。
通学する高校生の減少などで利用の先行きは厳しいが、30年ごろをめどに新市役所庁舎が駅周辺に建設されるなど、プラス材料もある。市や向上委員会は、現在、市民アンケート調査を実施しており、意見をもとに今後の展開を練っていくとしている。【有田浩子】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。