みなさんは、ブヨ(ブユ、ブト)に刺されたことがあるだろうか。筆者は、2017年6月に旅先の旅館の庭で左のふくらはぎを刺されたのだが、その後2~3年、ぶりかえす痒みで苦しんだ。現在、痒みは収まったものの、直径1センチ程度の円形の痕がしっかり残っている。

これから、夏休みでアウトドアを楽しもうと思っている人も多いはず。楽しいひと時に厄介なブヨに刺されないための知識を、害虫駆除会社を経営する足立雅也さんに聞いた。

ぶり返すやっかいな痒み

――そもそも、ブヨってどんな虫?

体長2~3ミリのコバエに似た虫です。日本全国の山間部に生息しています。春から秋にかけて出ますが、暖かい地域などでは一年中出る場合もあります。

刺された痕に、少し血が出るのが特徴です。それから、ぶり返す痒みがやっかいなんです。

アオキツメトゲブユ(画像提供:日本ペストコントロール協会)
この記事の画像(6枚)

――足立さんはブヨに刺されたことはある?

ありますよ。中学生の頃、キャンプに行った時、おでこと唇を刺されたのですが、おでこはたんこぶみたいに腫れて、唇はたらこ唇になりました。

最近では、7月中旬に北海道の富良野に行った時に、ホテルの庭で脚を刺されました。涼しいし、大丈夫だろうと油断していて、虫よけを塗らなかったのです…。

富良野でブヨに刺された直後(画像提供:足立さん)

帰ってきてから市販の薬を塗りましたが、やっぱり痒みがぶり返して、無意識にかいてしまっていますね。

虫よけは日焼け止めの後

――刺されないためにはどうすればいい?

ブユは、肌が露出していなければ刺してこないので、長袖、長ズボンを着るなど、なるべく肌の露出を控えることが大切です。そして、顔や手など、露出している部分に虫よけを塗ってください。


――塗り方の注意点は?

ムラなく塗ることはもちろん大切なのですが、この機会に知っていただきたいことは、塗る順番です。アウトドアの際は日焼け止めを塗ることが多いと思いますが、虫よけは、“日焼け止めやメイクの後”です。これを守らないと虫よけの効果が発揮されません。

虫よけは、肌から揮発することで虫の感覚を麻痺させて刺せなくするものなので、虫よけの上に何か塗ってしまうと効果がなくなってしまうのです。この時期、日焼け止めの塗りなおしメイク直しもあると思いますので、そのタイミングでも注意しましょう。

虫よけは日焼け止めの後に(画像はイメージ)

――塗りなおしのタイミングは?

塗りなおしのタイミングの目安は、「ディート」または「イカリジン」という有効成分(忌避剤)の濃度によって変わります。濃度が高ければ持続時間が長くなります。表示を確認のうえ、メーカーが推奨する時間で塗りなおしてください。汗をかいたらそのたびに塗りなおしましょう。

なお、勘違いされやすいのですが「ディート」または「イカリジン」の濃度は、高ければ効果が強いわけではありません。あくまでも持続時間が変わるだけです。


――顔に塗る時はどうやって塗る?

ミストと、スプレータイプの場合は、手に取ってから、顔に塗り広げてください。そうするとむせることなく綺麗に塗ることができますよ。

虫よけを選ぶ時のポイント

――虫よけの有効成分の「ディート」と「イカリジン」はどう違う?

ディートは50年以上使われている実績のある有効成分です。子供の場合は生後6カ月以上から使用できます。注意点としては、衣服やストッキングの上から使用すると、変色したり変形したりする場合があります。

イカリジンは2015年に認可された有効成分です。使用に年齢制限がなく、服の上からも使うことができます

ちなみに、ブユは服に覆われた部分は刺しませんが、蚊は速乾性の薄い布くらいなら、その上からも刺してきます。万全を期したい場合は、服の上にも虫よけを使うとよいでしょう。その場合、「イカリジン」なら使用できます。

虫よけを選ぶ際は忌避剤の種類と医薬品・防除用医薬部外品の表示をチェックしよう(画像はイメージ)

――ほかにも、虫よけを選ぶ際のポイントはある?

虫よけは、「医薬品」または「防除用医薬部外品」の表示があるものを使うことをお勧めします。これらは、厚生労働省が、メーカーから提出された効果・安全性などのデータに間違いがないことを確認して承認したものです。

一方、植物性天然由来成分は、虫を遠ざけることはできても、刺されないようにする効果はありません。また、収穫した地域やその年の天候によって品質が変わってしまうため、必ずしも満足のいく結果が得られないかもしれません。さらに、安全性も変化するため、皮膚のトラブルを引き起こすリスクが生じます。

ブヨの生息地には他の危険な虫も

――ブヨのほかにもアウトドアで注意したほうがいい虫は?

ブユがいる自然豊かな場所には、ツツガムシやマダニなど、危険な病気を媒介し、時には命にかかわる症状を引き起こす虫もいます

ですから、これからのシーズンの旅行やアウトドアの際には、忘れずに虫よけは持って行ってほしいですね。ブユに効く虫よけならそれらにも有効です。なお、マダニは服の隙間から入るので、シャツの裾はズボンにインして、ズボンの裾は靴下に入れるなどして、マダニが入ってくる隙間を作らないことが大切です。

ちなみに、飛行機で移動する場合、スプレーやミストタイプの虫よけは持ち込みに制限がある場合があるので、航空会社のルールを確認しましょう。心配な場合は、シートタイプの虫よけを出発前に購入しておくといいでしょう。

私は油断して刺されてしまいましたが(笑)、虫よけを持って、安心して旅行やアウトドアを楽しんでください。



ブヨに刺されないためには、露出を控えた服装と、虫よけの塗り方、選び方が大切であることがわかった。後編では、ブヨに刺された際の応急処置と、こじらせて痒みが長引いてしまった際の対処法を紹介する。

(後編:“ブヨ”に刺された痒みが数年続くことも!?応急処置と悪化して「結節性痒疹」になった時の対処法)

足立雅也(あだち・まさや)
害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。大手害虫駆除専門チェーン店勤務中に全国コンクールで優勝。その後、業務用殺虫剤、噴霧器を販売する商社に転職。蚊やマダニに対する殺虫剤効力評価試験に協力する。宿泊関連業界、殺虫剤メーカーと協力し、トコジラミ駆除方法を研究し、講演や執筆にて全国に広める。独立後、自ら現場作業をする傍ら、数社の技術指導を行う。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。