夏は寝苦しくて眠りが浅くなり、疲れが取れない…という人は少なくないだろう。夜の眠りが浅いと、日中の眠気に加え、暑さで体はよりへとへとに…。さらに、疲れているのに寝苦しくて眠りが浅くなる。この負のスパイラルを何とかしたい。

産婦人科医でヨガ指導者の高尾美穂さんに対策を聞くと、夏の不眠を防ぐには、「日中に体温を上げること」がカギになるという。

自力で体温を上げよう

高尾さんは人間の睡眠のメカニズムについてこう説明する。

「人間は、体温が下がることで眠気を感じるようになっています。したがって、日中、体を動かすことによって体温を上げ、夜に活動を止めて体温を下げることがよい眠りに繋がります」

産婦人科医でヨガ指導者の高尾美穂さん
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それなら、日中暑い今の季節は自動的に体温が上がりそうなものだが…。

「暑さによって体温が上がっている状態は、暑さそのものがストレスであり、強いストレスを受けている状態といえます。受動的な体温上昇ではなく、あくまで自分で体を動かして体温を上げることが望ましいです」

日中に体を動かすことによって、心拍数が上がり、筋肉の温度が上がり、体温が上がるという状態を作り出し、活動を減らすことで自然に体温も下がる。1日の中でこのメリハリをつけることが大切だという。

座ったままできるストレッチ

高尾さんによれば、本格的な運動にこだわらず、普段の生活の中で工夫できることから取り組んでほしいという。

通勤している人であれば、スマホを見ずに集中して早歩きする時間を作ることから始めてみよう。在宅勤務で体を動かす機会がほとんどない人は、「ランチに出かける」「スーパーに買い物に行く」など、あえて外に出る機会を作ろう。

さらに、仕事中でもストレッチを取り入れることもできる。デスクに座ったまま自然にできる簡単なストレッチを教えてもらった。

(1)手を組んで背中から上に伸びる

座ったまま手を組んで上に伸びてみよう

(2)椅子の背もたれを持って体をツイストする

椅子の背もたれを利用してツイストしてみよう

(3)机を押して椅子ごと体を後ろに引く

机を押して背中を伸ばしてみよう

この3パターンのストレッチを行うことで体を活発化させるとともに、デスクワークで目線が落ち、背中が丸まり、肩が前に出ている状態で凝り固まってしまった体をリフレッシュできる。

ちょっとした筋トレもお勧めだ。「冷えは冬より夏が過酷だった!?理由は自律神経の乱れ…いつでも「空気椅子スクワット」で“夏冷え”を撃退!」の記事(18日公開)で紹介した「空気椅子スクワット」をやってみるのもいいだろう。

(関連記事:「冷えは冬より夏が過酷だった!?理由は自律神経の乱れ…いつでも「空気椅子スクワット」で“夏冷え”を撃退!)

「要は、“今の体の状態と違う状態”を意識的に作ることが必要なのです」

寝る前は「緊張を解く」

昼に体を動かして体温を上げたら、夜は安静にして活動量を減らすことで自然と体温が下がってくる。さらに、寝る前には緊張を解くことが大切だ。

そこで高尾さんがお勧めするのが、「漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)」だ。これは、精神科の心理療法でも使われる方法で、わざと緊張した状態を作り、脱力することで緊張を解くというもの。

やり方は、以下のとおり。

(1)肩をギューッと持ち上げ、全身に力を入れて5秒間キープ
(2)脱力する

心理療法でも使われる漸進的筋弛緩法

ベッドに入った状態でも椅子に座った状態でもOK。寝る前に何度か試してみてほしい。

最後に、高尾さんはこう付け加える。

「眠りの質を上げたければ、なるべく生活リズムをくずさないように心がけてください。夏は花火大会のような夜のイベントも多く、夜更かししたくなる気持ちもわかりますが、ほどほどに」

昼間にしっかり体を動かして体温を上げ、夜は緊張をほどいてリラックス。そして、なるべく夜更かしは控える。眠りが浅くて困っている人は、ぜひ実践してみてほしい。

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高尾美穂(たかお・みほ)
産婦人科専門医、医学博士、スポーツドクター、ヨガ指導者。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。 婦人科部門責任者として女性のライフステージ・ライフスタイルに合った治療法を提示し、選択をサポート。マターナル(周産期)ヨガも提供。 著書に、『生理周期に合わせてやる!超効率的フェムテックダイエット』(池田書店)、『超かんたんヨガで若返りが止まらない! 老けたくないなら、骨盤底筋を鍛えなさい』(世界文化社)など。

イラスト=さいとうひさし

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