大阪府柏原市でいま小粒のブドウ「デラウェア」の収穫がピークを迎えています。

年々、ブドウ農家が減っていく中、大阪産ワインの伝統を守り続けるために始めたある秘策とは…。


■実は大阪は全国有数のブドウの産地 ワイン造りの歴史は100年超

大きな機械に次々と入れられていくのは、小粒の種なしブドウ「デラウェア」です。

大阪府柏原市にあるカタシモワイナリーでは、大阪産のブドウから、ワインのもとになる果汁を絞っています。

ブドウといえば、山梨県や長野県などをイメージしますが、実は大阪も全国有数のブドウの産地。

昭和初期には、栽培面積が全国一位で100を超えるワイナリーがあったのです。中でも温暖で、雨が少なく、ブドウの栽培に適しているのが柏原市。

ワイン造りも100年を超える歴史があり、このワイナリーが作った「大阪産のワイン」は、G20大阪サミットの晩餐会でも提供されました。

■高齢化によりブドウ農家は減少 人手不足を解消「アグリパートナー制度」

しかし…
【カタシモワイナリー醸造担当 高井麻記子さん】「ブドウ農家が減ってしまった実感は、すごくあります。かなり皆さんご高齢なので、毎年すごく心配しています」

年々、ブドウ農家は高齢化などで減少。

そんな中、ワイナリーを救ったのは、大阪府が3年前に始めたある秘策でした。

7月下旬、ブドウ農園にやってきたのは、農家…ではなく、大阪府八尾市に本社を置く、ゼラチン製造会社の社員たち。

【ぶどう農家 奥田大輔さん】「暑い中ご苦労様です。体調第一で収穫していただければ」

これは、大阪府が人手不足に悩む農家と、地元企業などをマッチングして期間限定で手伝ってもらう「アグリパートナー制度」を活用した取り組み。

このブドウ農園では収穫のピークを迎える夏の6日間に限定して手伝いに来てもらっています。

【新田ゼラチンの社員】「思ったより暑いですね。毎日やる農家の方は、大変だろうなと」

【新田ゼラチンの社員】「暑いけど結構楽しくて。(自分で)採ったブドウでワインができて、飲むと普段とは違うおいしさを感じられる」


ワイン用のブドウは生食用と違って、収穫に熟練の技術を必要とせず、初心者でも重要な戦力になるということです。

【ぶどう農家 奥田大輔さん】「(収穫の手伝いは)知人・友人のつてを頼ることが多かったが、平日は仕事をやっておられる方が多いので、人手が集まりにくかったのが現状。(アグリパートナー制度で)負荷を下げることができた」

■企業との日程調整で収穫されるブドウの味が毎年変わる ことしはどんな味?

この日2時間で収穫したブドウは167キロ、ワインおよそ160本分。

痛まないうちに、すぐにワイナリーに運びます。

通常ワイン用のブドウは、生育の状況を見て収穫する日を決めますが、この制度の場合は、手伝ってくれる企業との日程調整で収穫する日が決まるため、ブドウの味は毎年違います。

【カタシモワイナリー醸造担当 高井麻記子さん】「果汁に合わせてワインを造るので、毎年違う種類のワインができる。(絞った果汁を)飲んでみて初めて、『こんな味か、どうしよう、どんな感じで作ったら、おいしいワインになるかな』など、めちゃくちゃ緊張します」


おととしの果汁は、酸味が多かったため「スパークリングワイン」に。去年は、糖分が多かったため「甘口のワイン」に仕上げました。

果たしてことしは、どんなワインになるのでしょうか。

【カタシモワイナリー醸造担当 高井麻記子さん】「むっちゃおいしい…どうしましょう。かなり糖度が高くて、酸味もしっかり残っていて厚みもあるので、どんなワインを造っても、ことしはおいしいんじゃないかと思う。もうちょっと悩ませてください」

地元企業のちょっとした手助けで、守り続けられる伝統。
ことしも美味しいワインができそうです。

(関西テレビ「newsランナー」2024年8月21日放送)

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