咲き誇る桜の中を走り抜ける只見線の気動車=18日午前、福島県柳津町(芹沢伸生撮影)

「ゴ、ゴ、ゴォー…」。遅い春を迎えた山あいに、ディーゼルカーのエンジン音がこだまする。沿線では桜や梅、ハナモモ、菜の花などが咲き誇り列車の乗客を歓迎する。福島、新潟両県の豪雪地帯を駆け抜けるJR只見線の沿線に、遅い春がやってきた。

会津若松駅(福島県会津若松市)と小出駅(新潟県魚沼市)を結ぶ只見線(全長135・2キロ)は、風光明媚(めいび)なローカル線。平成23年夏の新潟・福島豪雨に伴う甚大な被害で、福島県の会津川口駅(金山町)―只見駅(只見町)間(27・6キロ)で不通が続いたが、一昨年10月に全線で運転を再開した。

ウグイスの声も響く

近年は車窓の絶景が海外でも人気を集め、インバウンド(訪日客)需要もうなぎのぼり。台湾やタイ、ベトナムなどからの観光客が増え続けている。

只見線が走る奥会津地域は今年、春の訪れが昨年と比べ1週間ほど遅かった。それでも、4月も中旬に入ると、汗ばむような陽気の日が続くように。沿線では強い日差しを受けて花々が輝き、山あいにはウグイスの声が響いていた。一方、只見線に沿って走る国道252号を新潟県境方面へ向かうと、日陰には泥にまみれた雪が、まだ残る場所もあった。

歴史も楽しめる沿線

只見線沿線の中で、特に駅周辺の桜が見事なことで知られる会津柳津駅(福島県柳津町)は大改修が行われ、今月13日、周辺の観光情報などを発信する新たな施設としてオープンした。

昭和2年の完成当時の姿で残る駅舎には、待合室などのほか、柳津町が発祥とされる民芸品「赤べこ」の張り子工房も整備された。駅舎はJR東日本東北本部から柳津町が無償譲渡を受け改修を行った。

ほぼ毎日、会津柳津駅で列車を見送り続ける斎藤明美さん=18日午前、福島県柳津町(芹沢伸生撮影)

只見線が全線再開通した日から同駅でほぼ毎日、乗降客の出迎えと見送りを行っている、斎藤明美さん(70)は観光ガイドも務める。「4月上旬は、桜を目当てに下車したものの、咲いてないので悔しがる人もいた。10日頃から一気に咲き、16日に満開となった」(斎藤さん)と、待ちわびた光景に目を細めた。

「只見線は山や自然の風景だけでなく沿線の歴史も興味深い」と話す斎藤さんは「新たな魅力も伝えてリピーターを増やしたい」と張り切っていた。

(芹沢伸生)

アクセス

JR只見線 福島県の会津若松駅へは東北新幹線・郡山駅からJR磐越西線で約1時間20分、新潟県の小出駅へは上越新幹線・浦佐駅からJR上越線で約10分。東京駅から郡山、浦佐両駅までの所要時間は、いずれも新幹線利用で1時間20分ほど。

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