楽しげなほろ酔い客が行き交う、JR仙台駅西口にある旧さくら野百貨店北側の小さな路地。政岡通りには低価格の大衆居酒屋が立ち並ぶ。2022年12月、千円でべろべろに酔える“せんべろ”の店として親しまれた飲食店「もつ焼専門 丸昌」から出火。

この記事の画像(6枚)

鎮火までは12時間半を要し、丸昌が入っていたビルは全焼した。前身は「復興支援酒場」として東日本大震災をきっかけに生まれた店は、2025年の再オープンを決めた。

“せんべろ”の人気店

「もつ焼専門 丸昌」は田楽30円、たこ焼き100円など安くておいしいメニューで人気を集めた。2022年に発生した火災の後、取り壊されたビル前を通りかかった常連客は「丸昌は酒好きには最高の店だった。こんなにいい店はなかった」と焼失を悔やんだ。丸昌を運営していたのは秋田市の飲食チェーン「ドリームリンク」。火事の後、社長の元には復活を望む多くの声が寄せられたという。

ドリームリンク 村上雅彦社長

復興支援を掲げて開店

「元々は“被災地のため”と始めた店が、かえって迷惑をかける形になって申し訳ない」と話すドリームリンクの村上雅彦社長。丸昌の前身は、2011年9月に開店した「復興支援酒場」。

東日本大震災の被災地を飲食で支えようと、仙台に出店したという。地産地消と利益全額を被災地に寄付することを掲げ、約1年間で被災3県に総額1500万円を寄付したという。その後、店は2012年9月に「丸昌」として再スタート。“せんべろ”の人気店として親しまれた。

土地オーナーも後押し

「丸昌」の跡地は仙台駅にほど近いこともあり、土地を所有する会社には火災後、飲食店事業者などから問い合わせが多数寄せられたという。しかし、「復興支援酒場」からの歩みを知っているからこそ「仙台のために今まで通りやってほしい」とオーナーとして再建を後押ししたという。

オーナーの仙都住宅センター 藤野榮次取締役会長(左)と村上社長(右)

そうした励ましの声を受けて、店の復活を決めた村上社長。火災で壁面が焼けた周辺ビルの修復工事が終わり、関係者への謝罪と説明が終わったことから、2025年3月に「丸昌」を再オープンする方針を決めた。

これからも「仙台のために」

「以前の丸昌よりも年代を問わずいろいろな方に来てもらえるように、大好きな仙台のまち、文化を海外からの旅行客にも知って楽しんでもらえるような店にしたい」。復活を待つ人や支えてくれた人たちのためにも、仙台の“せんべろ”の人気店として、恩返しを誓っている。

復興支援酒場 2011年撮影

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。