先日、南太平洋の楽園と呼ばれ、バニラの産出地としても有名なタヒチを訪れました。花のような濃厚な香りが特徴のタヒチ産バニラは、生産量がごくわずか。世界中のパティシエが求めてやまない逸品です。
ラン科の植物であるバニラは、湿気の多い谷間で育ち、受粉はすべて人の手で。実をつけ、さやがうっすら茶色になると収穫の目安です。天日干しにしては日陰に寝かせる工程を幾度となく繰り返し、ようやく甘く豊かな香りを放つバニラビーンズになります。とても手間がかかっているのです。
欧州でのバニラの歴史は、16世紀初めにスペインの冒険家が現在のメキシコ付近で見つけ、持ち帰ったことに始まるとされます。17世紀初頭に北フランス出身の植物学者が文献で紹介すると、フランス国内でもたちまち評判に。ルイ14世は、植民地だったインド洋のブルボン島(現在のレユニオン島)にバニラの木を植えさせます。今でもブルボンバニラは、タヒチ産と並ぶ最高級品です。
家庭でのお菓子作りでおなじみのバニラエッセンスは、香り成分をアルコールで薄めたもの。熱に弱く、冷菓や生菓子向きです。そのほか、バニラビーンズをアルコールに漬け込んで香りを移したエキストラクトや、香り成分をオイルで抽出したバニラオイルも出回っています。
おおもり・ゆきこ
フランス菓子・料理研究家。「スイーツ甲子園」(主催・産経新聞社、特別協賛・貝印)アドバイザー。
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