プロ野球、メジャーリーグを中心にデータ分析を用いた野球が主流になっている今、“アナライザー”の活躍が注目されている。彼らは、高精度カメラやレーダーを搭載した機器を使い、データを収集し分析。チームの戦略や選手のパフォーマンス向上を提言する専門家だ。

野球歴17年、人生の半分以上野球と関わる磯和純一朗氏
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小学5年から大学まで野球を続けた磯和純一朗氏も、その仕事に魅せられた一人。磯和氏が野球に携わるために選んだ仕事は、2023年都市対抗野球大会の優勝チーム・トヨタ自動車硬式野球部のアナライザーだった。

好きな野球に関わるために選んだ“アナライザー”という仕事

大学の野球部時代は2軍で過ごす時間が多かったという磯和氏。11年間の野球経験を仕事につなげたいと大学院に進学し、野球選手の動作解析やバイオメカニクス、コーチング論などを多角的に学んだ。

「大学の野球部で主に2軍だった下手な私が、一流の選手たちと関わるために何ができるのかと考えた時、“アナライザー”だと思った」と、目指した経緯について磯和氏は話す。その頃、トヨタ自動車野球部がアナライザーを探していたため、エントリーをしたのがきっかけだった。

撮影したデータを選手に共有する

アナライザーとしての仕事は、大きく分けて二つ。一つは、対戦相手の試合映像やデータを収集、分析し、傾向を探る「スコアラー」と呼ばれる仕事。もう一つは、自チームの選手のパフォーマンスを上げるために、測定、分析、フィードバックをする仕事。

1日のスケジュールは、午前8時半からのスタッフミーティングに始まり、9時からの全体練習では、練習の補助や撮影を行う。
午後は、自主練習の手伝いや、撮影した映像を選手たちが見られるように編集、分析する。
日が暮れて、帰宅後も作業が続く日も多い。

「失敗するし、全然上手くいかないこともある。もっとこういう観点があればチームに貢献できたのに」と、力不足を感じる日々だそうだ。それでも、アナライザーという仕事の魅力が日々の原動力になっている。

ブルペンにて投手を撮影する磯和氏

磯和氏:
アマチュアのトップレベルの選手たちのパフォーマンス向上に関わることができて、とても嬉しいです。また、「凄いと言われる選手たちが、なぜ凄いのか」を、データを用いて見える化できること。感覚で話すのではなく、数値やデータを用いて、理論的に説明できるところに、この仕事の面白さがありますよね。

アナライザーに求められる“野球愛”と“コミュ力”

チームのアナライザーとして2年目を迎えた磯和氏は、社会人チームならではの環境をプラスに捉え、試行錯誤の日々を送っている。プロ野球と比べ、チームの規模が小さい社会人チームは、アナライザー1人あたりの担当範囲が広いのが特徴だ。そのため、自分次第で何でもチャレンジできる環境なのだという。さらに、選手数が少なく関りが深い分、「チームが負ければ、選手たちと同じくらい悔しい」と話す。

分析機器を使い、投手1人1人にフィードバックを行う

そんな磯和氏いわく、アナライザーに向くのは、「野球が好きで、学ぶことを面白く、楽しく捉えられる人」だ。さらに、「コミュニケーション能力が高く、聞く力が重要だ」と実感している。「自分が興味深いと感じる分析結果よりも、選手のニーズに応える分析結果の方が、選手にとって有益」だからだ。だからといって、「アナライザーが全てではない」とも話す。

炎天下のグラウンドでデータ分析に勤しむ磯和氏

「結局は、選手の持つ感覚や意識が一番です。私たちはそれらを把握した上で、適切な情報を提供する。それに選手が納得し、受け入れてくれるからこそ、私たちの仕事に価値が生まれます」 

チームの目標に貢献するアナライザーに

野球の腕前は決して一流ではなかったものの、現在もアナライザーとして野球に携われる毎日が幸せだと話す磯和氏。

「スポーツ選手として活躍するには、ある程度の『才能』に『努力』を掛け合わせていかなければいけませんが、アナライザーは『野球への熱量』と『努力』でチームに貢献できると感じています」

今後は、アナライザーとしてまだ見ぬ世界や、未知の答えを探求し 「もっともっとチームに貢献していきたい」と、胸を膨らませた。

新鮮で刺激的な毎日を心から楽しんでいる磯和氏

磯和氏の野球人生は、日本一に縁がなかったという。このチームに加わったのも2023年の優勝後だったため、「チームに貢献して、一緒に日本一の景色を見たい」と、目を輝かせながら語った。そして「都市対抗で3連覇」という大きなチーム目標も教えてくれた。

大好きな野球に、プレイヤーではなく、アナライザーとして関わっている磯和氏。スポットライトは当たりにくいが、選手・チームを支える仕事に誇りと希望を持っている。「明日の練習に行くことが本当に楽しみ」と、取材中に話す彼が印象的だった。
今日も全国の球場のバックネット裏で、チームを支えるアナライザーたちが活躍している。

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