セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー大手のイトーヨーカ堂は、不振の衣料品事業について、アパレル大手アダストリアから独自ブランドの提供を受けて立て直す方針だ。ヨーカ堂は衣料品の自社開発から撤退しており、ユニクロなど集客力のあるテナントを誘致するテコ入れ策もあったが、独自ブランドによる再建を選択した。大手アパレルと協業し、食品を買い求める客層にターゲットを絞った衣料品ブランドで、収益を拡大する狙いだ。
食品の購買層を意識
独自ブランドの名称は「FOUND GOOD(ファウンドグッド)」。ファウンドグッドは2月から都内の一部のヨーカ堂ですでに展開しており、24日時点で関東を中心に47店で売り場が設置されている。7月までには64店に広げる計画だ。
ヨーカ堂の中心の客層である30~40代の子供を持つファミリー層を、メインターゲットに定め、主要商品の価格帯を3000~1万円程度とした。高価格帯の専門店と低価格帯の郊外型ロードサイド店の間を取った価格帯を設定。売れ筋商品と期待する「万能レギュラーシャツ」(3300円)は、接触冷感や紫外線を防ぐといった機能性を持たせながら着心地も両立させたという。
「ヨーカ堂の課題は衣料品事業の改革ではなく、〝食〟を中心とした強い店舗づくり。そのためにはメインの顧客層となる30~40代を獲得する必要がある」。ヨーカ堂の梅津尚宏専門店事業部長はこう強調する。ユニクロやしまむらといった集客力のある既存ブランドを誘致するよりも、食品を買い求める客層にターゲットを絞った独自ブランドを新たに展開した方が、総合スーパーとの相乗効果を得られると判断した。梅津氏は「30~40代の女性に支持され、企画力や提案力などに強みのあるアダストリアが協業相手としてベストだと思った」と話す。
アパレルの出店戦略に頭打ち感
一方のアダストリアも、主力のアパレルブランド「グローバルワーク」や「ニコアンド」などを含めた国内店舗数は計1370店を数える。ユニクロの800店を大きく上回るものの、出店戦略に頭打ち感が出ていた。その打開策として打ち出したのが、ヨーカ堂などとの協業による独自ブランドの展開だ。
今回、アダストリアはヨーカ堂に商品を提供するだけでなく、売り場づくりや販促活動、接客までを担っており、いわばブランドの総合プロデュース事業を展開する。アダストリアの小林千晃ビジネスプロデュース本部長は「今回のヨーカ堂との協業という好事例を、さまざまな地域に展開することが目標」と説明。ヨーカ堂との協業をモデルケースに、他の総合スーパーへの波及効果も期待する。
新ブランドが経営浮沈の試金石に
とはいえ、知名度のほぼない新たなブランドが、食品目当ての客層をどれだけ引き込めるかは見通せない。ブランドを展開してから約2カ月が経過したが、「まだまだ新しい顧客が取り込めていない」(アダストリアの小林氏)といった課題も見え始めている。
両社にとって、ファウンドグッドの成否が新たな成長を占う試金石となる。
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