1年前に遊佐町に誕生したウイスキー蒸留所に、待望の「貯蔵棟」が完成した。鳥海山の伏流水で作られるウイスキーの味に、日本のウイスキー第一人者も期待を寄せている。

遊佐町で、2023年10月にウイスキー作りを始めた月光川蒸留所は、県内3カ所目となる小さなウイスキー蒸留所。
良い酒を生み出そうと、仕込み方を少しずつ変えては出来を確かめるという試行錯誤が毎日続いている。

(月光川蒸留所・長谷川千浩製造部長)
「こちらは貯蔵棟を造っています。ことし3月から工事をスタートしまして完成予定が8月前半です」

蒸留所の隣で建設が始まったのは、ウイスキーづくりに欠かせない「貯蔵棟」。
月光川蒸留所がことし3月、初めてのウイスキーの「原酒」を数量限定で販売したところ、あっという間に売り切れた。

しかしウイスキーは本来、出来上がった原酒を樽に入れ3年ほど熟成させてはじめておいしくなる酒。
毎日次々と出来上がる原酒を熟成させる場所が手狭になったため、今回、数億円をかけて「貯蔵棟」を建設した。

(月光川蒸留所・長谷川千浩製造部長)
「もう少しで製造開始から1年経つんですけれど、まだまだいろんな面で試行錯誤しながら、より自分たちらしいウイスキーを作るために日々精進している」

完成まで最低3年はかかるウイスキー作り。
その間は投資の連続で、かつ蒸留所には一切現金が入ってこない。ここが、ウイスキービジネスが難しいと言われる理由だ。

9月に入り蒸留所を訪ねてきたのは、ウイスキー文化研究所の土屋守代表。
日本のウイスキーの第一人者が、月光川蒸留所の噂を聞きつけてやってきた。

(ウイスキー文化研究所・土屋守代表)
「(ウイスキー試飲して)うん、はるかにこちらの方がいい。これでまだ1年弱でし
ょ、3年経ったら良い色がついて、これがいわゆるスタンダードになり得る。あなたの所の“ウイスキー”だと思う」

完成したばかりの「貯蔵棟」も視察。
月光川蒸留所は、地下水を使って貯蔵棟全体を「加湿」することで酒の品質を向上させる新たな仕組みを採用している。ほかの蒸留所にはない取り組みに、土屋さんは強い関心を寄せていた。
完成した貯蔵棟では、樽に入れて熟成させるウイスキーの原酒4~5年分を保管できる。

国の国外で数え切れないほどウイスキー蒸留所を訪れ、その味を確かめてきた土屋さん。鳥海山の伏流水を使った山形のウイスキーの3年後の味に期待を寄せている。

(ウイスキー文化研究所・土屋守代表)
「素晴らしくおいしいですね。このおいしさは、まだ仕込んだばかりのニューポットの段階なので、樽熟成を重ねていってどうなるかということはまだわからない。この作りを続けていったら、いろんなチャレンジする意欲さえあれば、間違ったものは出来ていないし、将来的にすごいウイスキーになる可能性は秘めている」

日本のウイスキー第一人者も関心を寄せる月光川蒸留所。
蒸留所の佐藤社長も、手ごたえを感じている。

(月光川蒸留所・佐藤淳平社長)
「まずはおおむね好評、評価をいただけたと思う。ウイスキーの業界では著名な方ですので、うまくアドバイスをいただいた部分は改善しつつ、良いものを作れるようブラッシュアップして進化していきたい」

月光川蒸留所では、9月に2年目のシーズンの仕込みが始まった。これまで培った知識と技術を活かしておいしいウイスキーを生み出すための挑戦が続く。
月光川蒸留所の貯蔵棟で熟成されたウイスキーが販売されるのは、3年後の2027年の予定。

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