特集は喫茶店最後の日です。長野県須坂市の複合施設「パルム」が閉鎖することになり9月16日、施設内の喫茶店が半世紀の歴史に幕を下ろしました。名残を惜しむ客と店主の女性。最後の一日を取材しました。
■昭和の雰囲気を楽しめる喫茶店
複合施設の2階。
階段を上った先にその店、「ニュースコー」はありました。
看板メニューは、もっちりとした太麺に濃厚なケチャップを絡めた昔ながらのナポリタンスパゲッティ。数十年間、値段を変えず450円で提供してきました。
ナポリタンスパゲッティを注文した客:
「これだね。うまい、おいしい」
昭和の雰囲気を楽しめる店。しかし、それも9月16日で最後に。
ニュースコー・山岸公子さん:
「ありがとう、すいません、お元気で」
店主の山岸公子さん(75)。テナントとして入っている複合施設「須坂ショッピングセンター パルム」が閉鎖されることになり、店を閉じることにしたのです。
ニュースコー・山岸公子さん(75):
「(客が)朝からすごい。いつも来ているような人とか、閉めるのを知って来たとか。(最後ですが、今どんなお気持ちですか?)忙しくて考えてられない」
別れを惜しんで詰めかけた客。
最後の一日は寂しさを忘れさせるほどのにぎわいとなりました。
■1969年に完成「パルム」
長野電鉄の須坂駅から200メートルほどの場所にある「パルム」。
完成したのは1969(昭和44)年です。
地元の商店有志が組合を立ち上げて建設したもので、通路のある1階に商店が並び、2階、3階は住居部分。
その後も増床してピーク時は40店舗が入る施設となりました。
■昔のにぎわいはすごかった
「ニュースコー」もセンターが完成してすぐに営業開始。山岸さんは従業員として働き始めます。
その後、1991年に初代店主から受け継ぎ、30年以上にわたって店を守ってきました。
ニュースコー・山岸公子さん:
「(昔のにぎわいは)すごかったですよ、歩けないほど。パルムの中に店がみんな入っているから。学生さんがすごかった。学校帰りに『ただいま』みたいな感じで」
■シャッターを下ろす店が…
大型店出店の影響から客足は徐々に減り、1990年代に入ると、集客力のあったスーパーなどが相次いで撤退。
次第にシャッターを下ろす店が増えていきました。
そうした中、2022年、消防設備の不備が見つかりました。組合は「設備改修費の捻出は困難」として、組合員に土地・建物の売却を求め、この秋で閉鎖する方針を示しました。
■パルムの閉鎖とともに…
山岸さんは自身の年齢も考えパルムの閉鎖とともにニュースコーを閉じることに…
ニュースコー・山岸公子さん(2024年4月):
「ちょうどいいんじゃないかと思っている。切ないけどね、これから移転してもと思うから、やめるんだよとみんなに言っている」
客:
「どうしよう、これから先と思いましたね。ほかに全然ないですもんね、こういう方の店は」
「ショックでしたね、今度はどこへ行ったらいいかと思って。こういう仲間づくりができるかどうかと」
■最後の日は常連客が
そして、迎えた営業最終日。
ニュースコー・山岸公子さん:
「ありがとうね、あれから何十年も。楽しかったね、あのころ。ありがとう」
店は常連客やかつて通っていた客でにぎわいました。
市内から(50代):
「寂しいですね、こういう雰囲気の店が好きで、あっちこっち行ったりしているので。ひとつなくなっちゃうのは寂しいですね」
長野市から(50代):
「すごく懐かしい味ですね。高校時代、たまに来たりとか、そういうところで。閉まっちゃうということで、息子も連れてきて、昭和の雰囲気を味わってもらおうかなと」
9月16日の段階でパルムで営業していたのは、ニュースコーを含め数店舗。
9月中には全ての店が移転や閉業をする予定です。
■時代の流れと言われれば…
常連客・田村健一さん(56):
「お疲れさまでした。長い間、ありがとうございました」
ニュースコー・山岸公子さん:
「こちらこそ、ありがとうございます」
プレゼントを手に入店した田村健一さん(56)は店に通って35年の常連客。
9月16日は仕事を休んで駆けつけました。
常連客・田村健一さん:
「きみちゃんおいしい、ありがとう」
ニュースコー・山岸公子さん:
「はいよー」
常連客・田村健一さん(56):
「(若い頃は)食べに来たくて来たくて、お金なくても、『給料日払いでいいよ』とツケで食べさせてもらったりとか。だれでも受け入れてくれるし、誰でもお母さんという感じでいてくれているので、ファンは大勢いると思いますね。(閉店は)残念で仕方がないというのと、時代の流れと言われてしまえばそうかもしれないけど、こういう店があったんだと、ずっと言い続けていったり、みんなで語り合えたらいいなと」
■思い出話は尽きず…午後6時
常連客・田村健一さん:
「ありがとうございました、じゃあまたね、元気で」
山岸さん:
「ありがとう」
閉店時間の午後4時を過ぎても思い出話は尽きず、最後の客が店を出たのは午後6時でした。
忙しい一日となった山岸さん。
全ての客を送り出し、ようやく店の最後を実感していました。
■「涙出ちゃうじゃん」
ニュースコー・山岸公子さん(75):
「『おいしかったよ、懐かしい味だったよ』と言われてうれしかった。毎日元気で、みんなと話したりできるのが良かった。きょうは誰が来るのかなとか楽しみにしていた」
ニュースコー・山岸公子さん(75):
「涙出ちゃうじゃん、本当にね、寂しいです。頑張ってきて良かった。惜しまれてやめるのはいいよね。みんないいお客さんだったしね、続けてこられたんだと思う」
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