脂質異常症で治療中の50代後半の女性患者さんが、不安げな表情で外来にやってきました。1年ほど前から最近まで、健康被害が明らかになった「紅麹(べにこうじ)」成分を含むサプリメントを摂取していたというのです。服用をやめた理由は効果が感じられなかったからというのですが、報道を見てから思い返すと、なんとなく体調が悪かった気もして心配になったそうです。
すぐに血液検査をしてみましたが、幸い腎機能障害は見られず、他にも副作用と考えられるような異常は見つかりませんでした。この女性がサプリを摂取し始めた理由は脂質異常症の改善に少しでも役に立てばと考えたからだそうで、薬と違って気楽に始められるものだと思っていたそうです。
世の中にはサプリの広告があふれています。ドラッグストアだけでなく、コンビニエンスストアでもインターネットでも簡単にさまざまなものを手に入れることができます。サプリは一部の人には確かに効果を発揮します。検査で何らかの栄養素の不足を指摘され、それを補うのであれば理にかなったものといえるでしょう。
一方で、サプリに含まれる成分は、多かれ少なかれ体に影響を及ぼします。何となく体に良さそうだと思っていても、飲み始める前に、それが体に悪い影響も与える可能性があると考えてみましょう。
参考になるのはアメリカ国立衛生研究所(NIH)がまとめた「サプリメントについて知っておくべきこと」です。その日本語訳が厚生労働省が統合医療に関してまとめた「eJIM」というウェブサイトに掲載されています。これによると、ビタミンAは摂取量が多すぎると体を害する可能性があり、抗酸化作用のあるビタミンCやEは一部の抗がん剤の効果を低下させる可能性があることが分かっています。妊婦や授乳婦、子供のサプリ摂取も注意すべきだとされています。
サプリを飲み始める前に、健康上のリスクや適切な摂取量、摂取すべき期間などを明確にしておきましょう。処方薬と併用する場合などは、医師の承認を得ましょう。
その女性患者さんは、他にもいくつかサプリを摂取していたようですが、これを機に見直すことにしたそうです。「いろいろな栄養をサプリで補うと健康になると思っていたけれど、飲み方を間違えると、逆効果になる場合もあるのですね」と言いながら帰っていきました。
(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)
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