核のごみの最終処分場選定の第1段階となる文献調査を求める請願が原発立地自治体では初めてとなる佐賀県玄海町議会で採択された。最終処分を巡る議論に一石を投じたことになる。焦点は、町長の同意に移ったが、原発活用に避けて通れぬ議論が全国に広がる可能性もある。

人口約4900人の玄海町は、九州電力玄海原発を抱え、歳入の6割近くを原発関連収入が占める。県内で唯一、国からの地方交付税を受け取らない「不交付団体」で財政運営は安定している。一方で、過疎と高齢化が止まらず、処分場誘致の動きは振興策の切り札になるとの期待感が背景にあった。

核のごみを地下深くの岩盤に埋める処分地の選定プロセスは、国が定めた最終処分法に基づき3段階ある。活断層の記録などを調べる第1段階の文献調査は2年程度かけて行われ、調査に応じた自治体には最大20億円が交付される。

続く概要調査はボーリング調査を実施し、最後の精密調査では実際に地下トンネルを建設。すべての調査を終えるまでに20年程度かかる。各段階への移行前には首長の同意が必要で、この間に核のごみが持ち込まれることはない。

最終処分場の選定は、原発利用が始まってからの懸案でもある。平成19年、高知県東洋町が初めて名乗りを上げたが、住民が反発。出直し町長選では反対派が当選し、白紙撤回となった。

全国初の文献調査は令和2年に北海道寿都町と神恵内村で始まり、今年2月には報告書案がまとまった。長崎県対馬市でも誘致の動きがあったが、比田勝尚喜市長が昨年9月、受け入れ反対を表明した。

地下に石炭がある玄海町は、経済産業省が最終処分の適地を示した「科学的特性マップ」で、「好ましくない」地域に分類される。だが、全域に鉱物資源が存在するのかは「調査してみないと分からない」(同省幹部)ため、文献調査を妨げる理由にはならないという。

脇山伸太郎町長は5月中に受け入れ可否を判断する。最終処分が先行するフィンランドやスウェーデンも、原発立地自治体が受け入れを決めた。北海道の2町以外が調査に応じれば、他の自治体が後に続く可能性もある。

地元の商工3団体が提出した請願書は「(原発が立地する)自治体の責務」と明記した。原発と共存する小さな町が投じた一石はあまりに大きい。

(白岩賢太)

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