「健康のタネ」のコーナーでは今回、膵がんを取り上げます。がんと診断されてからの5年生存率はわずか8%余りで死亡率が年々増加する中、県内では2024年9月、がんの早期発見を叶える「膵がんドック」が導入されました。膵がんをとりまく現状や特に注意が必要な人について、専門医に聞きました。
  
膵がんについて話を聞いたのは、県済生会病院・外科副部長の寺田卓郎医師。「膵がんは昔から“難治がん”といい、治りにくいがんの代表で、日本全国で死亡者数が第4位となっている。最近では患者数が非常に増えているというのも大きな特徴」と話します。
  
原因は分かっておらず、国立がん研究センターによりますと、膵がんの死亡者数はこの30年で8倍以上に増加しています。

2022年には、全国で約4万人が膵がんにより死亡しました。

寺田医師は、膵がん患者のCT画像から「膵頭部、膵体部、尾部とあるが、パッと見て膵管の拡張が見られると、異常なのが分かる。これを頭側に追っていくと、膵頭部で膵管が途切れていて、そこに黒い領域があるのが典型的な膵頭部がんの所見」と説明します。

症状としては黄疸やひどい腹痛、背中の痛みが挙げられますが、自覚症状が現れたときにはかなり進行しています。「がんが見つかった人の半数が手術で治療できないほど手遅れな状態」(寺田医師)

がんが見つかった時には手遅れだったという患者の1人は「上腸間膜動脈というお腹の大事な血管を巻き込むようにがんがあり、切除不能だった」(寺田医師)

患者は主に高齢者ですが30代や40代でもかかる可能性があります。
 
特に注意が必要なのは糖尿病、飲酒・喫煙の習慣がある、肥満、家族に膵がん患者がいる、という場合です。例えば、糖尿病の人や喫煙の習慣がある人の発症率は1.7~1.9倍にものぼります。

寺田医師は「膵がんは再発率が非常に多い病気。基本的には5年間、術後の様子を見るが、再発が起こる際はもともと膵がんのあった場所や、遠隔転移して肝臓や肺に転移することが多くある」と注意喚起します。
 
国立がん研究センターによりますと、診断を受けた後の生存率を測る「5年生存率」はわずか8.5%で、胃がんや腸がんに比べてかなり低い数値となっています。
 
ただ「手術ができた場合の5年生存率は上がってきていて、10年前は約20%だったのが、近年では約50%にまで上昇している」と寺田医師は強調します。
 
そのカギはやはり「早期発見」です。「1センチ以下で見つかると、手術することによって9割程度治ると言われている」(寺田医師)

「膵がんが心配」という患者が非常に多いため、その受け皿として、また早期の膵がん発見につなげようと、県済生会病院では9月、県内で初めて「膵がんドック」を導入しました。

膵がんドックではMRIや血液検査などを組み合わせて、膵管の異常や早期のがんを発見することができます。その検出率は78.6%で、これまでの検査と比べて検出率が2.2倍に上がりました。

ドックの受診が勧められているのは、40歳以上の人や、家族に既往歴がある人などです。

福井県済生会病院・外科副部長 寺田卓郎医師:
「はっきりとした予防法がないため、危険因子をなるべく減らすことが大切。喫煙や飲酒、肥満に注意するのに加え、定期的なチェックが重要。膵がんになりやすい因子を持っている人は、体重が減ったり食欲がなくなったりとささいな変化があれば、膵がんドックに関わらず、病院を受診してもらいたい」

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