宮内庁などは27日、天皇、皇后両陛下が6月下旬、英国を国賓として公式訪問される方向で準備を進めていると発表した。日程など詳細は今後英国側と調整し、閣議で正式決定する。両陛下が国賓として同国を訪問されるのは初めて。
両陛下は令和2年、英女王エリザベス2世の招待により国賓として英国を訪問される予定だったが、新型コロナウイルス禍で延期に。女王が死去した4年9月、両陛下は訪英して国葬に参列されたが、短期間の滞在だった。5年5月のチャールズ国王の戴冠(たいかん)式には、秋篠宮ご夫妻が参列されていた。
宮内庁によると、今年に入り、チャールズ国王から両陛下に対し、改めて招待があったという。上皇ご夫妻が過去に国賓として同国を訪問された際には、歓迎行事や、バッキンガム宮殿での晩餐(ばんさん)会などが行われた。
英王室では2月以降、チャールズ国王とウィリアム皇太子の妻、キャサリン妃が相次いでがんと診断されたことを公表。今後、王室メンバーの体調も考慮して最終調整が進められるとみられる。
■友好親善深める機会に
日本の皇室と英王室は150年以上の縁があり、両陛下は、英王室がチャールズ国王のがん罹患(りかん)と公的行事の取りやめを公表して以降、初の国賓になるとみられる。両国は慎重に最終調整を進めるが、長年の交流を礎に、関係性を深める貴重な機会となりそうだ。
皇室と英王室の歴史は明治2(1869)年、当時のビクトリア女王の王子、アルフレッドが遠洋航海の途中に立ち寄ったことにさかのぼる。ビクトリア女王の即位50年、60年の記念式典には日本の皇族が参列した。
昭和天皇は皇太子時代の大正10年、初の外国訪問で英国を訪れ、ジョージ5世の歓迎を受けた。のちに、「ジョージ5世から立憲政治のあり方について聞いたことが終生の考えの根本にある」と語っている。
上皇さまは昭和28年、昭和天皇の名代として、女王エリザベス2世の戴冠式にご臨席。当時、英国では戦後の厳しい反日感情が残っていたが、女王の歓迎で親善を深められた。「その陰には日英の友好の絆を強めたいと願う人々の努力があったことを忘れることはできません」。上皇さまは平成10年、国賓として招かれた女王夫妻主催の宮中晩餐会で、当時をこう、回想されている。
天皇陛下は、英オックスフォード大に留学したほか、皇太子時代にも訪英された。チャールズ国王は、令和元年の陛下の即位の礼に参列。2年に計画されていた女王の招待による訪英は、陛下の即位後初の外国ご訪問になる予定だったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で見合わせが続いた。
4年9月の女王の訃報に接し、陛下は哀悼の意を表し、「私の即位後初めての外国訪問として、私と皇后を英国に御招待いただいたことについて、そのお気持ちに皇后とともに心から感謝しております」とするお気持ちの文書を公表。女王の国葬参列のため、皇后さまとともに急遽(きゅうきょ)、英国を訪問された。
今回、両陛下の国賓としてのご訪問が実現すれば、パンデミックや女王の死去、代替わりを経て、皇室と王室のいっそう親密な交流が期待される。
(緒方優子)
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