義母は89歳、田舎で一人暮らしをしている。3人いる子供のうち、長男は若くして病没したので、残された2人の娘が、代わる代わる帰郷し、義母の面倒を見ている。その都度、私が運転手役を仰せつかる。

義母は、両膝関節の手術をしたので、杖(つえ)を2本ついてやっと歩ける。徐々に認知症も進んできて、同じことを何度も言ったり、「分からない」を繰り返す。

妻は、そんな義母を感心するくらい丁寧に、根気よく、優しく世話をする。自分の親とはいえ、なかなかできることではない。私は待たされている時間イライラするが、妻にはそんなところが微塵(みじん)もない。

車の中で義母が「私はビールを一度も飲んだことがない。いっぺん飲んでみたい」と言ったので、私はつい「お母さん、温泉行ったとき…」そこまで言うと妻に背中を小突かれた。年寄りの言うことを否定するなということらしい。そういえば、妻はどんなことでも母親の言うことを受け入れている。本当に頭が下がる思いだ。

私のときも、きっとそうしてくれるだろうと考えるのは甘すぎるかなぁ。

権藤実(67) 大阪市都島区

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