“新紙幣”が登場した「お金のチョコ」=大阪市北区で2024年10月28日、梅田麻衣子撮影
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 新しいデザインの紙幣(日本銀行券)を市中でよく見かけるようになってきた。駄菓子屋さんでは定番のお札を模したお菓子にも“新紙幣”が登場している。その一つ「お金のチョコ」は、「子供銀行券」のパッケージの中に、チョコレートとお札をデザインしたカードが1枚入っている。でも、新しいデザインを期待して開封したら、古そうなお札のカードが出てきた。何で?

 新紙幣の発行は、2004年以来20年ぶり。今年7月3日に発行が始まり、1万円札に実業家の渋沢栄一、5000円札に津田塾大創始者の津田梅子、1000円札には日本の近代医学を切り開いた北里柴三郎の肖像が描かれている。「お金のチョコ」のパッケージは、その3種類の新紙幣と2000円札、いずれかのデザインだ。大きさは縦4・5センチ、横9センチ程度で、実物よりだいぶ小さい。

 開封して最初に出てきたのは、樋口一葉の肖像が描かれた5000円札のカード。表だけでなく、裏もしっかり再現されていて感心する。いくつか開けてみて渋沢栄一のカードもゲット。でも「壹圓」や「拾圓」と書かれた、実物を見たことがないお札のカードも出てきた。サクサクしたパフ入りのチョコレートは親しみやすい味で、あっという間におなかに収まったのに、なじみのないデザインは何だかふに落ちない。

「お金のチョコ」には、パフ入りのチョコレートとお札をデザインしたカードが入っている=大阪市北区で2024年10月28日、梅田麻衣子撮影
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 製造・販売しているのは「正栄デリシィ」(茨城県筑西市)。商品企画部の村上秀明さんに話を聞いた。まず、新紙幣にはいつ対応されたのですか。「7月に間に合うよう、昨年から準備をしていました」と村上さんは明かす。そういえば新紙幣は「本物」を手にするより先に、お菓子屋さんで「お金のチョコ」の方を見かけました。

 実物が手元にないので、国立印刷局のホームページなどで確認しながら、デザイナーと協力して作業を進めた。できたカードは本物そっくり。新紙幣に対応した7月はチョコレートには過酷な季節だったが、他のチョコレート菓子と同様、クール便で配送するなどして乗り切った。気合が入っていますね。

 「お金のチョコ」の製造は二十数年前からという。別のメーカーが廃業し、そちらで作っていた商品を受け継いだ。最初のカードは、普段よく使う紙幣のデザインのみだった。古いお札のものも含めて20種類に増やしたのは10年ごろ。新札バージョンも加わり、現在は23種類がランダムに入っている。運が良ければ、キラキラのレアカードと出合えることも。デザイン性の高さから、コレクションを楽しむ人がいるのも納得できる。

「お金のチョコ」に入っているお札をデザインしたカード(下)と本物=大阪市北区で2024年10月28日、梅田麻衣子撮影
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 カードに採用する紙幣は、多く市中に流通しているもの、していたものから、デザイン・色味がバラエティーに富むように選んだ。なぜそこまで頑張るのですか? 「やっぱり喜んでもらいたいじゃないですか」と村上さんは笑顔を見せる。古いお札のデザインも加えることで、興味の幅を広げるきっかけにもしてほしいと考えた。「会社には『これは誰ですか?』という問い合わせもあるんですよ」

 リアルな見た目のカードは、大人でも楽しい。岩倉具視が描かれた500円札は、お小遣いとしてもらった幼き頃の記憶がよみがえるし、伊藤博文や夏目漱石の1000円札も懐かしい。聖徳太子は1万円札しか記憶にないが、1000円札などもあって面白い。肖像がない5、10円札も新鮮だ。「ふに落ちない」とか思ってごめんなさい。

 正栄デリシィは、製パン・製菓の原料やナッツ類の輸入・加工などを手がける正栄食品工業(東京都台東区)のグループ会社。三つの会社が合併し、07年に今の正栄デリシィが誕生した。

「お金のチョコ」に入っているお札のカードは、いずれもリアルなデザイン。あと1枚レアカードがある=大阪市北区で2024年11月14日、梅田麻衣子撮影
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 もともとは駄菓子メーカーではなく、「お金のチョコ」は別のメーカーから継承した。それでも「大人の持ち物に対する憧れを満たすパロディー商品も『駄菓子の文化』です。せっかく継承したので、その文化も受け継いでいきたいんです」と村上さんは話す。

 「定番」だと思っていたけど、きちんとバトンをつなぐ人がいて、令和の“新紙幣”誕生につながった。「前のメーカーがいつから製造を始めたのかとか、引き継ぎの経緯とか、記録が残っていなくて……」と村上さんは申し訳なさそうだが、思いはしっかり継承していますよ。その心意気、プライスレス!【水津聡子】

芸が細かい「サク山チョコ次郎」

「サク山チョコ次郎」のビスケット部分には、一つ一つに「チョコジロー」のおしゃべりが書かれている=大阪市北区で2024年10月28日、梅田麻衣子撮影
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 人気商品「サク山チョコ次郎」は、チョコレートとビスケット、ミルククリームを合わせた一口サイズのお菓子。「独自のかわいいお菓子を作りたい」とプロジェクトチームで検討し、2017年に誕生した。パッケージなどにデザインされたキャラクター、食いしん坊な珍獣「チョコジロー」が愛らしい。チョコレート部分のチョコジローの表情は30種類、ビスケットに書かれた「おしゃべり」などは100種類もある。「おしゃべり」は「ベリーグッチョ」など、チョコジローの口癖「チョ」が入っている。子どもでも読みやすいよう、選ぶ言葉や文字の大きさを工夫している。こちらも芸が細かい。

 「大人のクランチ」はラム酒風味のチョコレートやコーヒー豆を使っており、香りも楽しい。いろんなナッツやドライフルーツ、クッキーなどを組み合わせた商品もある。ブランド名の「emmy(エミー)」には、お菓子を食べて笑ってほしいとの思いが込められている。

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