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<身の回りにある「無料のマシン」を活用しよう。普段の生活のなかにも、ひと工夫すれば体力づくりに効果抜群な動きがたくさんある>
記録的な酷暑が去り、ようやく涼しくなってきたところで「さて、運動でもするか」と考えている人も多いのでは。ですが、整形外科専門医でフィットネストレーナーでもある吉原潔氏によれば、「実は、普段の生活のなかにも、ひと工夫すれば体力づくりに効果抜群な動きがたくさんある」そうです。
そこで本稿では、気負ってきつい運動をしなくても、日常生活を自然に筋トレに変えるための7つのヒントを吉原氏が紹介します。
※本稿は、吉原氏の著書『30秒で体力がつく スゴイもも上げ』から、一部を抜粋・編集してお届けします。
自転車だって立派な「筋トレマシン」になる
実は、普段の生活のなかにも、ひと工夫すれば体力づくりに効果抜群な動きがたくさんあります。ポイントは、「あえて筋肉に負荷をかけるように動かす」ことです。
何気なく動いている人と、意識して動いている人。1年後の体力は、まったく変わってきます。日常生活が筋トレになるヒントを挙げたので、ぜひ取り入れてみてください。
①歩くときのスピードに緩急をつける
体力づくりにウォーキングをするなら、量より質。ダラダラ歩いていても体力はつきません。とはいえ、速歩で歩き続けるのは体力がないとつらいものです。そこでおすすめしたいのが、
・無理のない範囲で速歩き
・つらくなったらゆっくり歩き
これをくり返してください。ただし、ゆっくり歩くときにも、歩幅を広く、背すじを伸ばすことは忘れずに! さらに、おへその下(丹田)に力を入れて歩くと、腹筋も同時に鍛えられて、ぽっこりおなかの解消にもなりますよ。
②無料の筋トレアイテム=階段を使う
つき並みですが、実は1番難しいことかもしれませんね。エレベーターや、エスカレーターを使いたくなるお気持ちはわかります。でも、スポーツクラブに通ったら月にいくらかかるでしょうか? 階段ならタダです。無料の筋トレマシンなので、ぜひご利用ください。
つらくなったら途中で休んでも、手すりを使って上ってもOKです。ただし、下りは腰やひざに負担をかけるため、痛みがある方はほどほどに。
③自転車のギヤを重くしたり、軽くしたりする
自転車に乗っているなら、こんなによい筋トレマシンはほかにありません! もしギヤ付きの自転車なら、重いギヤに設定すれば筋肉に負荷をかけられ、体力づくりに最適です。
きつくなったら軽くする、そしてまた呼吸が整ってきたら重くするなど、負荷に緩急をつけてください。また、軽いギヤにして足を速く回してこぐと、敏しょう性を高めることができます。
行儀がよくない「あのクセ」も実は効果的
④自転車のサドルを少し低くする
自転車のサドルを若干、低めに調整してみましょう。これでこいでみると、いつもより少しこぐのが大変になるはずです。でもこのおかげで、ももの前側の筋肉である、大腿四頭筋を鍛えることができます。
ただし、低くしすぎてバランスがとれず、ふらふらするのは危険です。安全のため、運転姿勢がくずれないくらいの高さに調整してください。
⑤よく使うものは 手の届くところに置かない
立ったり座ったりするだけでも、筋トレになります。テレビのリモコンなど、よく使うものは手の届くところではなく、少し離れた場所に置きます。リモコンを使うたびに立って取りに行く、これだけでも1日の運動量は大きく変わっていくものです。
⑥貧乏ゆすりを行う
行儀がよくないとされる貧乏ゆすり。実は、医学的には健康効果が認められている動きなのです。脳からの指令を、筋肉に伝達する神経の機能を高めます。また、筋肉自体も収縮と弛緩を瞬時に行うことで、敏しょう性が高まります。動かす足の速さを、なるべく速くすると効果的です。
⑦深呼吸をする
浅い呼吸は、肺をふくらませる呼吸筋(横隔膜)の衰えを招き、心肺機能の低下につながります。1時間に1回、背すじを伸ばして胸を大きく開いて深呼吸をする時間を作りましょう。猫背は浅い呼吸の原因になるので注意しましょう。
それでは次に、「食事」についてお話ししたいと思います。食事の話抜きで、体力は語れないからです。
「医食同源」という言葉を聞いたことはないでしょうか。「病気を治すのも、日常の食事をするのも、生命を養い健康を保つためには欠くことができないもので、源は同じだ」という意味です。つまり、「日頃の食生活に注意することは、病気を予防し、健康を維持することになる」ということです。
もともとは「薬食同源」という中国の思想なのですが、1972年当時、NHKで放送されていた料理番組で、臨床医であった新居裕久先生が発表された言葉です。これは、「細胞」の視点から見ても真実だと言えます。
体力の底上げには「食事」も欠かせない
私たちの体を維持しているのは、37兆個の細胞です。正常な細胞は、古くなったら死んで、新しい細胞と入れ替わります。死んでいく細胞の数は毎日億単位ですが、それとほぼ同数が新しい細胞に入れ替わっています。
新しい細胞へ入れ替わるには、材料が必要です。それは、栄養素。つまり、食事です。私たちの体は、自分が食べたものでできているのです。
ですから、普段の食事に問題があれば、筋トレをいくらしたところで、思うように体力はついていきません。それどころか、栄養不足の状態で筋トレをすると、逆に筋肉が減ってしまうことさえあります。
とにかく、細胞レベルで体力をつけるには、食事に気を遣う必要があるのです。具体的には、以下の2つです。
①5大栄養素、特にたんぱく質をしっかりとること
②「食べる量」に注意すること
まず、①について。5大栄養素とは、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル。当たり前のことですが、なかなかバランスよくとれていないのが現状です。そのなかでも特に、不足しがちな、たんぱく質を積極的にとるとよいでしょう。
そして、②について。自分の経験からも言えるのは、「食べる量」が大事ということ。筋肉をつけたいからといって、多く食べすぎてもダメだし、体を絞るためといって少なすぎてもダメです。目的に合った適量が大切です。
実は、その適量というのがなかなか難しいのです。
感覚としては「腹8分目」でしょうか。その適量を1日3食、なるべく決まった時間に食べることが、体のリズムを整えていくうえで有効です。
たんぱく質を意識してとったほうがいい理由
「たんぱく質が大事なのは知っているんですけど、お肉って硬いし、量も食べなきゃでしょう? 食欲も昔みたいにないし、結局、うどんとか柔らかいもので簡単に済ませちゃうんですよ」。
高齢の患者さんと接していると、よくこんなことを聞きます。1日に最低限必要なたんぱく質の量は、体重1kgあたり約1gです。体重が60kgなら、60g程度のたんぱく質が必要ということになります。
ただ、これは「たんぱく質の量」です。肉や魚でとろうとすると、脂肪を除いた量で300g。けっこうな量ですよね。たんぱく質が不足しやすいのは、患者さんの例からも明らか。
しかし、1日の必要量は多い──。これは、ちょっとした “作戦” を立てる必要がありそうです。
作戦① 食べやすいメニューでたんぱく質の量を増やす
作戦② たんぱく質を効率よく吸収させる
この2点です。それにしても、なぜ、こんなにたんぱく質にこだわるのか。それは、人間の体の約60%は水分ですが、残りの約40%のうち、たんぱく質が半分近くを占めるからです。
髪の毛、爪、皮膚、血液、内臓、筋肉など、体のあらゆる組織の材料になるのがたんぱく質。材料が不足すれば、髪の毛や爪が伸びることができなくなるなど、古い細胞が新しい細胞に入れ替わる新陳代謝が滞り、体調が悪化します。また、たんぱく質は免疫細胞の材料にもなるため、免疫力も低下してしまいます。
もう1つ注意すべき点は、たんぱく質は、炭水化物や脂質とは異なり、貯蔵ができないことです。したがって、定期的に補充する必要があるのです。
ただし、腎臓の機能が低下している方は、たんぱく質の量に注意が必要です。適正量は医師と相談してください。
「ささみ」と「納豆」はたんぱく質の優等生
たんぱく質には、動物性と植物性があって、理想は1:1の割合でとることです。
動物性たんぱく質を含む食材=肉や魚、卵、牛乳・乳製品
植物性たんぱく質を含む食材=大豆や大豆製品
ですが、堅苦しく考えず、「肉や魚、卵だけではなく、納豆や豆腐などの大豆製品を、3食のどこかで食べよう」くらいに思ってください。
それでは、動物性たんぱく質と、植物性たんぱく質をバランスよくとるために、私が実際に食べているレシピを2つ紹介します。1つは鶏のささみを使った「ささみめかぶ」(動物性たんぱく質)、もう1つは納豆を使った「酢納豆」(植物性たんぱく質)です。
【ささみめかぶ】
動物性たんぱく質を含む食品は脂質も多く、どうしてもカロリーが高くなりがちですが、ささみなら脂質が少ないので、その心配がありません。そして、一緒に和えるめかぶは、海藻特有の食物繊維であるフコイダンを含みます。
フコイダンには、細胞を活性化させ、風邪やインフルエンザなどに対する免疫力を高める効果があると言われています。パサパサしがちのささみを、めかぶのネバネバが包んで食べやすくなるのもよい点です。
【酢納豆】
納豆は調理もお皿も必要なく、とにかく手軽でありながら、たんぱく質だけでなく、ビタミンや食物繊維も豊富な、栄養価にすぐれた発酵食品です。酢を加えると、ふわっと泡立ち糸引きが弱くなって、納豆特有のにおいも抑えられます。納豆が苦手な方でも、食べやすくなるでしょう。
また、納豆に酢を加えることで、大豆に含まれる鉄分や、カルシウムの吸収率を向上させたり、血糖値の上昇をおだやかにしたりする作用が期待されます。私は食前に、スープのような感覚で食べています。
どちらも手軽にできて、これだけでおなかがきつくなる量ではないので、「もう1品」として、食事に取り入れやすいはずです。
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※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら。鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。