各地の看護学校が入学者数の減少に直面している。思うように学生が集まらず、長い歴史に幕を下ろすことを決めた学校も。若年人口の減少や大学志向の高まりが影響しているとされるが、看護学校は地域の医療機関に人材を送り出してきており、影響も指摘される。

「最後」の入学式

今月9日、蕨戸田市医師会看護専門学校(埼玉県戸田市)で新入生25人が入学式に臨んでいた。同校にとっては受け入れる最後の入学生だ。

昭和39年に開校。平成27年からは、3年課程のカリキュラムを4年で教える学校として歩みを進めてきた。高度化する医療に対応する人材を育成するとともに、働きながらでも看護師を目指せる時間割を組むなど学びの多様なニーズにも応えてきたが、ここ数年は1学年定員40人に対し、入学生は30人弱にとどまる状況に。令和7年度以降の学生募集を停止し、10年3月の閉校を決めた。

加藤久美子副校長は、「少子化や大学志向が加速している。近隣には別の看護学校もあり、影響を受けてきた」と学生減少の背景を説明。「新しいことに挑戦しながら卒業生を送り出してきたが、学校を閉じざるを得ない状況に至ったことは残念だ」と肩を落とす。

地元に人材を

日本医師会が助産師、看護師、准看護師を養成する医師会立の299校を対象にした5年の調査では、定員充足率は「看護師3年課程」で平均84・2%に落ち込んだ。そのほか、「助産師課程」で77・5%▽「看護師2年課程」で75・1%▽「准看護師課程」で62・1%-。定員割れに陥る学校が多い現状が浮き彫りになった。

厚生労働省の調査によると、看護が学べる大学は、平成25年度の218校から令和4年度には303校まで増加。学校種別ごとの入学者数は大学が2万6517人となり、養成期間3年以上の看護学校など(2万6475人)を上回った。

一方、看護学校の苦境が地域医療に及ぼす影響も指摘されている。

京都府北部にある3年制の国立病院機構舞鶴医療センター付属看護学校(舞鶴市)。入学生の多くは府北部出身者で、卒業後は舞鶴医療センターをはじめとする地元の医療機関に就職していくという。

昭和23年の開校から、2800人以上の卒業生を送り出してきたが、近年は少子化に加え、京都市内の大学進学を目指す高校生が増加。今春は募集定員40人に対し、新入生は12人。新入生を含めた在校生は69人と定員(120人)を大幅に下回り、今年度の入学生をもって学生募集を停止し、令和9年3月に閉校する。

同校の出口孝志事務長は「地元を離れて進学していった人は、卒業後もそのまま都市部の医療機関に就職していくことが多い。人材を呼び戻すことは容易でない」と打ち明ける。

人口減少が進む府北部では看護師不足が深刻化しているが、地域の看護学校が姿を消していけば「状況はさらに厳しくなるのではないか」と危機感をあらわにした。

舞鶴医療センターは今年度、同センター看護師としての就職を条件とした、新たな奨学金の支給を看護系学生向けに開始した。「次世代を担う人材の確保につながってほしい」と出口氏。現在、地域で人材育成を継続していく方法も関係機関と検討していると明かした。(三宅陽子)

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