食べ物を噛む力や飲み込む力が落ち、食べる動作がうまく出来ない「摂食嚥下障害」。加齢に伴う高齢者のイメージがありますが先天性の病気などで摂食嚥下障害を抱えるこどもたちがいます。そんなこどもたちにも家族と一緒に外食や旅行を楽しんでもらおうと県内で新しい取組が始まっています。
11月、那覇市のホテルを訪れたのは4人のこどもたちとその家族です。実はこのこどもたちにはある共通点があります。それは食べ物を上手く噛めない、飲み込めないなど何らかの問題で口からの食事がうまく出来ない「摂食嚥下障害」があること。
今回、千葉県から沖縄を訪れた加藤さくらさん。娘の真心さんは先天性の病気で摂食嚥下障害があります。
加藤さくらさん・真心さん親子「旅行先で私たちだけ美味しい温かいものを食べてこの子だけレトルトって罪悪感しか無いじゃないですか、だったら一緒のものを食べたいし美味しいねって共有したいし、あの土地のあの食べ物、美味しかったねという思い出も一緒に共有したいので、それはもう当たり前のように(同じ食材を)食べたいですよね。」
摂食嚥下障害のこどもたちが外食や旅行をする際には食べ物を細かくする道具を持ち歩き、食事の際にはペースト状にする作業が欠かせません。
そのため外食や旅行を控えてしまうことも少なくないといいます。そんな現状を打開しようと那覇市のホテルが新たな取組に挑戦しています。
11月4日那覇市のホテルパームロイヤルNAHA国際通りで行われたイベント。
摂食嚥下障害を持つこどもとその家族が同じ食材を食べられるようにこどもたちにはホテル側がペースト状にした食事が振舞われました。
この日のメニューはあぐーやゴーヤーなど県産食材を使ったバーベキュー口からペースト状にした食べ物を食べたり、胃ろうなどの経管栄養で食事をする子など、それぞれの「食べ方」で県産食材を堪能しました。
比嘉絵里さん・柚葵ちゃん親子「ミキサー食をやってほしいとお話してもなかなか対応できませんと断られることが多くて、なかなか外に食べに連れていくということがあまり無くて。」
比嘉絵里さん「匂いとか味とかも結構こういう子たちって敏感なんですよ横で食べていると同じものを食べたいという風に食べ終わっていても「食べたい」と(意思表示)するので一緒に同じものが食べられるということがありがたいですね。」
イベントを主催した加藤さんは、食を理由に外出が難しいと感じる人を減らして誰でも気軽に外出できる環境を目指して活動しています。
加藤さくらさん「別にお口から食べられなくなっても胃ろうでも皆で食事を一緒に楽しめるというのが当たり前になったらいくつになってもどんな状態でも旅行できるし、本当にすごく希望だなと思う。」
高倉総支配人はどのような人が訪れても滞在を楽しめるように観光立県・沖縄のホテルとして力を尽くしていきたいと意気込んでいます。
ホテルパームロイヤルNAHA国際通り高倉直久総支配人「食物アレルギーや障害をお持ちの方とか全ての方が沖縄に来てもそれぞれ対応できるような施設がたくさんある、嚥下障害の方々の対応が出来る優しい島になっていけるきっかけになればと感じています。」
旅先でサポートする新たな取り組みを、県内で摂食嚥下障害を持つ患者や家族に食支援を行う看護師の大城清貴さんは1つ階段をのぼったと話します。
大城清貴さん「困っている方たちとその困っていることを解決してくれる店や会社があまり無いということが嚥下障害の方が外に出にくい大きな原因かな。」
「家族で同じものを食べるということが家族との繋がりも絆も強くなりますし、体の栄養だけじゃなくて心の栄養にも繋がってくるので食べる楽しみというのは生きる楽しみ。」
摂食嚥下障害は加齢に伴って噛む力が衰えたり、脳梗塞などの病気や時には薬の副作用が原因で誰もがなってしまう可能性があり、実は幅広い世代に関わることなのです。
「摂食嚥下障害の方が多くなってきているこどもも大人も多くなってきている中で専門職だけで関わっていくのは非常に難しい。社会全体で摂食嚥下障害というのをもっと知ってもらえたら嬉しいなと思います。」
摂食嚥下障害があるこどもやその家族にも楽しい旅行と食事の思い出を共有してほしいという思いが込められた今回のイベント。
障害や病気があってもいくつになっても楽しい旅行や食事を諦めることなくその人らしく生きられる社会を目指して摂食嚥下障害に対する取り組みはまだ始まったばかりです。
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