太平洋側の人にとっては意外かもしれないが、冬になると、日本海側では頻繁に雷注意報が発表される。実は「冬の雷」は世界的にも珍しく、そのエネルギーは夏の雷の数百倍にも達する。村田光広気象予報士が、そのメカニズムを解説する。
この記事の画像(8枚)福井市の30年間の平均では、雷が発生するのは1年で37日ほどで、月別に言うと12月が1番多い。ゴロゴロと雷が鳴ると、直後にあられが降ってくる事もある。
冬の雷は”一発でエネルギーを大量放出”
夏の雷と冬の雷の違いは、積乱雲が発達する高さにある。夏の場合、積乱雲は地上から3000メートルから5000メートルで背が高いが、冬の場合は、せいぜい1000メートルぐらいで、比較的背が低い。
夏の積乱雲は大きく成長し、空の上では、たくさん放電している。空の上で雷が鳴っているが、地上では気付かない事が多い。
ところが、冬の積乱雲はスケールが小さく放電の回数が少ない分、1回あたりの放電量が多くなる。これは「一発雷」と言われていて、“冬の雷は1発鳴って終わり”ともいわれる。
エネルギーを溜め込むため、夏の100倍から数百倍のエネルギーといわれている冬の雷。電圧でいうと数千万ボルトから1億ボルト。1億ボルトというと、100ワットの電球を 90億個照らすほどのエネルギーだ。
世界的に珍しい「冬の雷」は海と大陸の位置が関係
実はこの「冬の雷」は世界的に珍しく、日本では日本海側だけ。世界では、ノルウェーの西海岸、アメリカの五大湖の周辺で観測されている。共通点は、西に海や大きな湖があり、さらにその西に大きな大陸があることだ。
雷から身を守るには、やはりゴロゴロと音が聞こえてきたら、家や車の中に避難するのが良い。車は、雷が仮に落ちても、金属のボディーからタイヤ通って地面に逃げるため安全だと考えられている。
気を付けるべきなのは、木の下に避難してはいけないということ。木よりも人の方が電気を通しやすいので、木の側にいると、雷が木から人に飛び移る「側撃(そくげき)」の恐れがある。同様に、木造の家の軒下や公園などにある東屋と呼ばれる小さな屋根の下も、危険だ。
屋内退避できないときは「雷しゃがみ」
雷の特徴は“高いところに落ちる”ことなので、 傘をさしている状態も危険。屋内などに避難するか、避難する場所がない時は、「雷しゃがみ」といって、とにかく姿勢を低くするということが大切。
雷しゃがみ
・耳を塞ぐ(大きな音で鼓膜が破れるのを防ぐ)
・足を揃える(足を離していると、一方の足から電気が流れて体を通り、もう一方の足に流れるということがあるため)
・つま先立ちをする(雷は地面から伝わってくることもあるので、地面との設置面をなるべく小さくする)
雷鳴が聞こえる時は、なるべく屋外での活動、行動を控えるようにしよう。
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