中学受験の出題にも流行りのようなものがあります。例えば算数。10年前あたりからこの手の問題をよく見かけるようになったよねという問題があるのです。大手塾のテキストは、この新傾向の問題を追いかけているように思います。

良い作戦ではあるのですが、ちょっと注意が必要。流行りに乗らない頑固な学校もあるのです。公開テストまでは良いのですが、実際の入学試験では自分の受ける学校が頑固者かどうかを調べておく必要があります。それでも突然作問者が交代することもあるでしょうから、結局は昔と今の両方に対応できることが一番。

私は、娘の中学受験までにたくさんの問題を解きましたが、それ以降もずっと解いています。「以前はこの手の問題はあまり見かけなかったのに、今では普通に頻出扱いだよなあ」と思うことがちょこちょこあるのです。

新傾向は数問も解けばすぐに克服できるために、スラスラと解けるようになる。ここで以前あったようなゴリゴリ問題がくると、重く感じてしまうのです。ですから、偏りを減らす目的で他塾の公開模試を受けてみるのも良いかもしれません。

ある難関中学校の算数が面白いのです。毎年毎年、「図形の回転・移動」を出題してくるのです。大問1つまるまるありますから、これを確実に取ればかなり有利になる。

当然、某塾は「図形の回転・移動」を徹底的に演習させているのです。過去問を20年ほど見返しても面白いほど繰り返し出題しています。そして、練習していればそこまで難しくない問題なのです。

これは、『うちの学校を受験する以上、ここはしっかり勉強してきてね、第一志望なんでしょ』というメッセージに見えますが、「おいおい!それならたまに外すなよ!」と言いたくなります。「え?今年は出てない!」ということがあるのです。ほんと、意地悪ですね。

娘が受験したときも、数列と数表対策を徹底してやりました。しかし、本番では出題されませんでした。保護者控室で配られた試験問題を見て、膝に力が入らなかったのをよく覚えています。

どうだろうか、1000問は解いただろうか、この対策に割いた勉強時間はどれほどだろうか、数列と数表のためにどれほど寝不足になっただろうか、そう思うと泣けてきました。でも一校しか受験しないという人はほぼいない。数校受験すると、数列と数表なんていう頻出問題はどこでも出題されるものです。

逆に言うと、受験というのは全教科ですっぽりハマれば学力以上の学校に受かるのです。毎年何人かいるでしょう。7割ハマってもかなりの確率で受かる。こうして春からコツコツ積み上げるのです。すると、だんだんと見えてきます。おお、ここまで来たかという景色が。

筆者紹介

桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。

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