かつての教室で熟成を重ねる白神生ハム=秋田県大館市山田で2024年4月24日午前11時37分、高橋宗男撮影
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 秋田県大館市郊外の廃校になった小学校で、白神山地からの風を受けながら生ハムが熟成されている。舌の肥えたファンたちが「聖地」と呼ぶ製造工場。どんな場所でどんな味の生ハムが作られているのか知りたくて、現地を訪ねてみた。

 大館市の市街地から北西に約5キロ。白神山地のふもとにある田園地帯に、生ハム製造会社「しらかみフーズ」がある。2008年春に廃校になった旧大館市立山田小学校の校舎を活用しており、2階の「教室」に原木と呼ばれる県産豚の後ろ脚部分の骨付き肉が数千本ぶら下がっていた。

 社長の夏井雅人さん(62)は、伯父が09年に設立した旧社に創業後間もなく工場長として呼ばれ、19年に新会社の「しらかみフーズ」を設立して事業を引き継いだ。この間、一貫してスペインのハモンセラーノ(山のハム)にならった豚肉と天日塩のみを使う製法で「白神生ハム」を作り続けてきた。

原木から薄くスライスされた生ハム=秋田県大館市山田で2024年4月24日午前11時46分、高橋宗男撮影
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 「食塩相当量をいかに減らすか。毎年、挑戦してきた。昨年、ようやく納得いくデータが出てきた」。食品衛生法に定められた「6%以上の食塩相当量」をギリギリでクリアする方法の手応えをつかんだという。

 水温が安定的に5度以下になる冬場に仕込む。成形、血抜きに続き、数回にわたる塩のすり込みと塩抜きの後、原木は教室へ。雑菌が増えないように、いかに早く表面を乾燥させるかが重要で、白神山地から吹き下ろす強く冷たい風は低温乾燥にもってこいなのだという。

 冬場の教室は南北にある大きな窓を開け放ち、吹きさらしになる。長期熟成中は窓側と廊下側の温度差が生じるため、6月と10月に原木の位置を入れ替える「席替え」を行い、最低18カ月間寝かせる。

 しっとりした食感とほどよい塩気、芳醇(ほうじゅん)な香りが特徴。販売先は北海道から沖縄まで全国にわたり、飲食店への原木販売が主力だが、個人で原木を購入するファンも少なくないという。夏井さんは「各地の生ハムを食べ歩く愛好家が訪ねてきてくれて、『ここが一番うまい』と言ってくれた」と笑顔を見せ、「子どもからお年寄りまで楽しめる味。口の中にうまみがずっと残ります。日本中の方に一度試してみてもらいたい」と話している。

 同社のウェブサイト(https://shirakami018.com/item/)などで、スライス(50グラム税別850円から)や原木(約7・3キロ同4万150円)などを販売。大館市のふるさと納税の返礼品にもなっている。【高橋宗男】

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