発足当時の警視庁音楽隊=昭和23年5月(警視庁提供)

「音楽があるとないとでは、人の集まりも反応も、チラシを受け取ってくれるかどうかも違う」

警察署が都民向けに実施した啓発イベントで、音楽隊による演奏の〝効能〟に触れた警察官の一人がこう話す。

警視庁の広報活動に欠かせない音楽隊が初めて発足したのは昭和11年。『警視庁史 昭和前編』によると、「士気高揚」「式典を崇高・厳粛にする」などを目的に隊員13人で始まった。戦争激化でいったん解散したが23年、活動目的に「警察に対する都民の親愛感を深める」ことが加わり、再結成した。

戦後の発足に当たり、初代楽長となった元陸軍軍楽隊長の山口常光氏は昭和44年の『自警』に、結成当初の思い出をつづっている。庁舎内での練習は「やかましい」と言われ、近くの日比谷公園で演奏すると、周囲は「黒山の人だかり」となった。こうして、水曜日に一般聴衆向けの演奏会として始まったのが、今に続く「水曜コンサート」だという。

再結成から約80年。カラーガード「MEC」と合わせて約60人の大所帯となった音楽隊は、プロの音楽集団として、警察への理解促進に貢献している。

年間100~150回のイベントに参加し、発足から昨年末までの累計は約1万7千回にも上る。副隊長の杉山裕大警部は、「都民と警視庁をつなぐ架け橋として、今後も研鑽を積んでいきたい」と意気込んでいる。(外崎晃彦)

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