栗駒山麓ジオパークビジターセンターの巨大スクリーン。荒砥沢地すべりのイメージCGなどが流れる=宮城県栗原市(菊池昭光撮影)

今年正月の能登半島地震や今月3日に起きた台湾地震では、改めて自然の怖さを実感させられた。東北でも平成23年3月、2万人超の犠牲者を出した東日本大震災は記憶に新しい。この3年前の岩手・宮城内陸地震では多くの犠牲者とともに山体崩壊という人智を超えた現象も起きた。自分たちに必要な備えは何か? 「日本最大級の地すべり」などを分析・展示する「栗駒山麓ジオパークビジターセンター」(宮城県栗原市)を訪ねた。

ジオパークとは、地球上で起きた現象のなかで科学的な意味を持つ遺産を保全し、防災教育や観光に活用するプログラムを指す。

栗駒山麓ジオパークは、「東北一の紅葉」ともいわれる栗駒山(標高1626メートル)から、日本有数の湿原「世界谷地」、日本に飛来する渡り鳥の80%が羽を休めるとされる「伊豆沼・内沼」までの栗原市全体を範囲としている。27年に日本ジオパーク委員会から認定された。

〝空家〟校舎活用

栗駒山麓ジオパークビジターセンターは、統合のために〝空き家〟になった旧栗駒小学校をそのまま利用。多目的ホールや教室がそのまま、展示スペースとして生まれ変わっている。開館は31年4月。

玄関を入ってすぐの長い廊下の床には、栗原市全体の航空写真がはられ、栗駒山麓ジオパークが一目瞭然。それぞれの教室には、ジオパークを形成する自然遺産がパネルで丁寧に説明されている。圧巻は多目的ホール。1、2階がぶち抜きになった400インチの巨大なスクリーンに、栗駒山麓ジオパークにある自然遺産の映像が5分間ごとに流れ、見学者を圧倒する。

中心コンテンツとなるのは、M(マグニチュード)7・2、深さ8キロを震源とする典型的な内陸直下型の岩手・宮城内陸地震によって起きた「荒砥沢(あらとさわ)地すべり」だ。消防庁によると、この地震で死者17人、行方不明者6人、負傷者は426人、住家被害は、全壊30棟、半壊146棟という甚大な被害が出た。

旧栗駒小学校を再利用した栗駒山麓ジオパークビジターセンター=宮城県栗原市(菊池昭光撮影)

巨大スクリーンで

巨大スクリーンには、落差156メートルで35~40階建てのビルが滑り落ちたような大規模な荒砥沢地すべり(幅900メートル、広さ98ヘクタール)のイメージCGが流れた後、実写で今の地すべり跡の様子が映し出される。日本最大規模の地すべりを目の当たりにしたような感覚になる。

「私は荒砥沢から10キロほどの距離にいました。たまたま、土曜日で知人の自宅を訪ねた時でした」

栗駒山麓ジオパーク推進協議会の佐藤忠実事務局長(63)は遭遇当時をそう振り返る。

「車が揺れているなという感じでしたが、遠くの電柱がメトロノームのように揺れ始めました」。慌てて市内に戻ったものの、建造物の被害はあまりなく、町は落ち着いていた。しかし、山側では約3500カ所で地すべりが起き、山体崩壊になっていた。荒砥沢は、今でも許可された関係者しか近づけない。

荒砥沢への県道は現在、冬季閉鎖中だが、ゴールデンウイーク前には通行可能になるという。地震が多発している時期だけに、ビジターセンターとともに、自然の脅威をぜひ再認識してみたい。

(菊池昭光)

アクセス

栗駒山麓ジオパークビジターセンター 東北新幹線くりこま高原駅で下車、タクシーで約40分。東北自動車道で若柳金成ICから約30分、築館ICから約40分。入場無料で駐車場完備(火曜日休館)。年間2万人が訪れる。

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