環境省の前田光哉審議官(左)に早期救済を求める要望書を手渡す新潟水俣病患者・被害者団体の代表ら=新潟市中央区で2024年5月21日午前10時33分、中津川甫撮影

 伊藤信太郎環境相と水俣病患者・被害者の懇談中に環境省職員が被害者側のマイクの音声を切った問題を受け、環境省の前田光哉審議官(56)が21日、新潟市で新潟水俣病の患者・被害者団体などと面談した。被害者側は伊藤環境相との懇談の場を新潟で設けるよう求める要望書を前田氏に手渡した。前田氏は「国会の会期が6月23日までなので、『その後にできる限り早く』と大臣は思っている」と応じる意向を示した。【中津川甫】

 伊藤環境相は熊本県水俣市で再度懇談の場を設ける意向を示しており、前田氏は新潟の懇談について「水俣市の方とあまり日がたたない形で調整できれば」と述べた。また環境省職員がマイクを切ったことについて、「不適切だった」と謝罪した。

 面談では、同省が今月設置した、水俣病対策を進める「タスクフォース」に対し、被害者側から批判が相次いだ。同省幹部がタスクフォースが水俣病救済について扱わない旨を発言したことについて、被害者側が求めている全員の救済からかけ離れていると指摘した。前田氏はタスクフォースで実務責任者を務める。

 さらに被害者側は、懇談中にマイクの音声を切るよう指示した同省の木内哲平特殊疾病対策室長が室長職にとどまりタスクフォースに入っていることについて、「不適切ではないか」と不信感をあらわにした。これに対し、前田氏は「業務に精通し、タスクフォースの目的を達成するためには木内氏の知見は必要だ」と強調。室長に2月に就任したばかりの木内氏が業務に「精通」している根拠も問われ、「有識者と意見交換しているので、1カ月たてばベテランの役割が期待されている」と説明した。

 新潟水俣病被害者の会の小武節子会長(87)は、新潟水俣病の公式確認から59年になる31日の式典に伊藤環境相が出席しないことに触れ、「大変残念。(懇談は)日を改めるということだが絶対に守ってほしい」と要望。新潟水俣病5次訴訟原告団の皆川栄一団長(80)も「5月31日は私たち被害者にとって特別な日。大臣に伝えてほしい」と訴え、来年以降は出席するように求めた。

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