大阪府堺市の集合住宅で隣りに住む男性を死亡させた罪などに問われている男の裁判員裁判で検察側は「金づるにして命を奪った」として懲役14年を求刑しました。

楠本大樹被告(34)はおととし堺市中区の集合住宅で、隣の部屋に住んでいた唐田健也さん(当時63)に暴行を加え、死亡させた罪などに問われています。

楠本被告は暴行罪については認めるも、傷害致死罪については「人が死ぬような力を加えて殴ったことはない」と起訴内容を否認しています。

2人は生活保護を受けていて楠本被告が唐田さんに様々な理由をつけて生活保護費から
金を支払うよう要求し、常習的に暴行を加えていたといいます。

16日の被告人質問で楠本被告は、裁判の争点である「暴行と死亡の関係」について
「自分の暴行で亡くなったかもしれないと思った」と話しました。


■ケースワーカーの目の前で暴行 職員は通報せず

肋骨が30カ所ほど折れていた唐田さん。

解剖した医師は、死因についてこの骨折が原因で起きた、肺がしぼんでしまう「両側緊張性気胸」だと証言しました。

さらに、16日の裁判には、区役所の元職員2人も出廷。

暴行は区役所職員の前でも行われていたにもかかわらず、職員は警察に通報していませんでした。

堺市の検証では、「職員が毅然と対応していれば死亡は防げた」という結果が公表されています。

通報しなかった理由について、当時ケースワーカーだった元職員は「楠本被告への恐怖心が大きかった」と話し、元係長は「(楠本被告に)恨まれるのを回避するのが難しいし、そうなったときに組織(区役所)が守ってくれるという安心感がなかった」と話しました。

一方で、楠本被告は区役所職員に何度も「唐田さんは1人暮らしが無理なので施設に入れるべき」と求めていた一面もありました。

楠本被告は、関西テレビの取材に対し、唐田さんについて次のように語りました。

【楠本被告】「好きでもなく、嫌いでもなく、見捨てられない人でした。僕がやったことで亡くなったなら、とても申し訳なく思っています」

■「金づるにし命を奪った」と検察側 懲役14年求刑

23日の裁判で、検察側は「根拠の乏しい理由をつけて金銭を要求し、金づるのようにして、命を奪い強く非難される」として懲役14年を求刑しました。


一方、弁護側は「暴力的な行動パターンを繰り返すのは、軽度知的障害のせいで懲役8年程度がふさわしい」と主張しました。

楠本被告は、裁判長から最後に言いたいことを聞かれると「唐田健也さんに心の底から
申し訳ないことをした。一生背負っていかないといけないと思っている」と反省の言葉を述べました。

判決は来月5日に言い渡されます。

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