[命ぐすい耳ぐすい 県医師会編](1333)

 昨年の夏、私の父は胃がんで死去しました。叔父もスキルス胃がんで死亡しています。私はもっと早く胃がんを見つける方法を知っていたので、大変後悔しています。

 一般的に発がんの危険因子は遺伝、喫煙、アルコール、肉や脂肪、野菜、塩分が思い浮かびますが、胃がん患者の99%にヘリコバクター・ピロリ菌感染が認められます。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は1994年、ピロリ菌による慢性的な胃炎から胃がんを発症すると発表しました。

 オーストラリアの医学者バリー・マーシャルとロビン・ウォレンが82年にヘリコバクター・ピロリ菌を発見し、2005年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。マーシャル先生はピロリ菌培養液を自ら服用し、ピロリ菌が胃炎の原因だと証明しました。その後の研究でピロリ菌は胃炎だけでなく、胃がんの原因であることが分かりました。

 日本にピロリ菌感染者は6千万人いると推測されています。上下水道の整備や食品衛生によって若い人たちのピロリ菌感染率は低くなっています。ピロリ菌は内視鏡検査以外にも、血液や便、吐く息でも調べられます。県や市町村によっては胃がんリスク検診という名称でピロリ菌とペプシノーゲンを調べて胃がんを見つけています。全国では307の自治体が実施し、沖縄県では沖縄市、嘉手納町、北中城村で行っています。

 ピロリ菌に感染していたら除菌しましょう。2種類の抗生剤と胃酸を抑える薬を1週間内服します。大きな副作用はありません。最初の除菌が失敗に終わっても2次治療があるので、あきらめないでください。

 ヘリコバクター・ピロリ菌の検査は無症状の場合、保険適応外で自己負担となりますが、胃潰瘍と診断されていなくても慢性胃炎と診断された場合は保険適応となりました。幸い沖縄県は胃がん罹患(りかん)者数が全国的に見て少ない県ですが、胃がんは予防できるので、一度ヘリコバクター・ピロリ菌を調べてみてはいかがでしょうか。

(岡田晋一郎・県立北部病院外科=名護市)

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