恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」の被害金回収をうたい、広告会社役員らに弁護士名義を貸して法律事務をさせたとして、大阪地検特捜部は29日、大阪弁護士会所属の弁護士、川口正輝容疑者(38)=大阪市=と広告会社役員ら計5人を弁護士法違反の疑いで逮捕した。
他は、広告会社役員の井田徹(39)=横浜市=ら4容疑者。特捜部は2月、川口容疑者が所属する「G&C債権回収法律事務所」(大阪市北区)を家宅捜索し、実態解明を進めていた。
川口容疑者の逮捕容疑は2022年12月~23年7月、ロマンス詐欺などで被害に遭った17人の相談について、弁護士資格を持たない4人に自身の弁護士名義を貸し、法律事務を取り扱わせたとされる。4人は17人に賠償請求手続きなどを指導し、着手金計約1800万円を受け取った疑いが持たれている。特捜部は5人の認否を明らかにしていない。
弁護士法は、弁護士が無資格者に名義を貸す「非弁提携」に加え、弁護士ではないのに報酬目的で法律事務をする「非弁活動」も禁じている。
大阪弁護士会によると、川口容疑者はロマンス詐欺などの相談窓口をインターネット上に開設。「返金の可能性は必ずあります」とアピールしていたが、被害者らの相談にはほとんど対応していなかったとされる。
22年8月から1年余りで約1800人の依頼を受け、着手金は総額約9億円に上るとみられる。着手金は1件当たり20万~300万円で、大半は広告会社側に業務委託料として支払われていたという。弁護士会は23年10月、非弁提携の疑いがあるとして川口容疑者を懲戒請求した。
弁護士会の聞き取りに対し、川口容疑者は被害相談の対応について「事務員に任せていた」と話す一方、一部は自ら受任して被害金を回収したと説明しているという。川口容疑者は4月上旬、毎日新聞の取材に対し、何も答えなかった。【高良駿輔】
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