記者会見で第三者委員会の報告書の内容を説明する宮島繁成委員長(右から2人目)ら=大阪府泉南市で2024年5月31日午後1時8分、中村宰和撮影

 大阪府泉南市で2022年3月、市立中学1年の男子生徒(当時13歳)が自殺した問題で、市の第三者委員会は31日、学校でのいじめを認定し、不登校になった生徒が学校側に強い不信を募らせたことが背景にあったとする調査報告書を公表した。学校側について「いじめ対応の不十分さが学校は安全な場所でないと感じさせた」と指摘した。

 報告書によると、生徒は小学4年の時、上級生らに容姿などについて悪口を言われるいじめを受け、6年時に不登校になった。中学入学後は登校した時期もあったが、「少年院帰り」などとといった暴言を受けるいじめが続いたこともあり、再び不登校になった。22年3月、市外の中学への転校を希望していた生徒側に対し、市教委は「市内の学校にしか転校できない」と回答した。

 報告書は、いじめを受けた当時の小中学校の対応について「見守られているという安心感を与えるには至っていなかった」と指摘。自殺の直前には、市教委から希望に沿わない転校方針を示されたり、教員による家庭訪問がなくなったりしたことで、生徒は「苦しみから逃れる唯一の希望が断たれた」「学校から見捨てられた」という心境となり、追い詰められたと結論づけた。

 さらに、生徒の死後数カ月にわたり、市教委の審議など適切な対応を怠っていたことも認定した。

 記者会見で、転校希望への対応について、第三者委の岡田敏之委員長職務代理は「苦しい思いを市教委や学校は感じていなかった。別の対応ができたはずだ」と述べた。

 報告書公表を受け、生徒の母親は「思いが受け止められてうれしい。学校や市教委は報告書を真摯(しんし)に受け止めてほしい」とのコメントを出した。代理人の弁護士は「学校や教育委員会が『問題のある子ども』といった色眼鏡をかけずに真摯に家庭と向き合い、専門家の力を借りながら少しの工夫をしていれば、死を避けられたのではないかと思うと残念だ」とした。

 山本優真市長は「再発防止の方策を関係機関と調整して取り組む」とする文書を発表した。【中村宰和】

大阪府泉南市の中学生自殺を巡る経過 2018年5月 上級生から「死ね」などと言われたと教員に報告

   20年4月 小学6年になり不登校に

   21年4月 中学校入学後、一時登校する

     11月 不登校に

   22年3月 生徒が亡くなる。死後4カ月たっても市教委への報告などが行われず

   24年5月 市の第三者委員会が調査報告書を公表

相談窓口

・24時間子供SOSダイヤル

 いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。

 0120・0・78310=年中無休、24時間。

・子どもの人権110番

 「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。

 0120・007・110=平日の午前8時半~午後5時15分

・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/)

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/)

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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